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アッシャー症候群ってなに?

浜松医科大学耳鼻咽喉科 岩崎 聡


 難聴と眼疾患を合わせ持つ多くの病気があります。たとえば虹彩と眼底の色素欠損(白子症)、白内障と円錐水晶体(アルポート症候群)、角膜混濁(ハーラー症候群)、網膜異形成(ノリ−症候群)、網膜変性と瞳孔異常(レジューム症候群)、虹彩色素欠損と内眼角(ワルデンブルグ症候群)などの眼疾患がみられ、さらに他の臓器の症状(皮膚、腎臓など)も伴います。Usher(アッシャー)症候群は眼症状と難聴のみを伴う疾患です。

 今回は少し詳しくアッシャー症候群の病気について説明したいと思います。症状と症状のみられる時期によって3つのタイプに分けられています。

 タイプ1は幼小児より高度な難聴が見られ、時々めまい、ふらつきも見られます(前庭機能低下)。また網膜変性も10歳前後で生じてきます。

 タイプ2は若年の頃より中等度の難聴が見られますが、高い音色の音が聞き取りにくい(高音障害型)ことが多く、言葉自体の聞き取りはそれほど支障ないため難聴を自覚して耳鼻科に行かないことがあります。めまい、ふらつきは伴いません。網膜変性は思春期以降に生じてきます。

 タイプ3は難聴、網膜変性とも思春期以降に生じて来ますが、難聴は徐々に進行していきます。したがって成人以降で難聴を自覚して耳鼻科を受診することもあります。またタイプ3は症状の程度や時期に個人差がみられます。

 網膜変性がみられる方で耳鳴りを自覚していたり、体温計のピーという音が聞こえない方は耳鼻科を受診され、聴力検査と前庭機能検査(めまいの検査)を受ける必要があります。聴力検査で難聴があった場合、難聴には伝音性難聴(中耳炎などで生じる)と感音難聴があります。感音難聴にはさらに内耳性難聴と後迷路性難聴に分けられますが、アッシャー症候群は内耳性難聴になります。この難聴の特徴は少し音が大きくなっただけでも急に大きくなったように感じ、不快を伴います。対処方法は急に難聴が悪化した場合は薬による治療を行います。

 また難聴が40dBから80dBの軽度から中等度の場合は補聴器となります。補聴器はかならず耳鼻科専門医を通して購入してください。できれば補聴器適合検査ができる施設がよいでしょう。補聴器を使用して気に成る点は耳鼻科専門医にできるだけ言った方が良いでしょう。補聴器の調整の助言や調整自体を行ってくれます。また90dB以上の高度難聴の場合は人工内耳の適応になります。これは手術が必要ですが、補聴器で聞き取れなかった耳が聞こえるようになります。 ただし人工内耳を行っている施設は全国でまだ60施設ほどですから、高度難聴の方は人工内耳を行っている施設を受診して詳細は聞いてください。特にタイプ1は若い時期から眼症状と高度難聴を伴いますので、眼症状が悪化する前の早期に耳鼻科専門医を受診する必要があります。実際Usher症候群で人工内耳を装用されている方はいらっしゃいます。

 今回はアッシャー症候群の症状と難聴の対処について説明いたしました。次回はアッシャー症候群の原因についてー最近の知見ーについてでも原稿を書きたいと思いますが、説明を希望する内容がありましたら、できるだけお答えしていきたいと思います。今後とも宜しくお願い申し上げます。


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