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●世界会議が終わって

アイヤ会代表 小泉 貴


 みなさん、こんにちわ、アイヤ会の代表をさせていただいている小泉です。おかげさまで8月3日、4日に行われた第12回国際網膜世界会議においてパネルディスカッションとして企画したアイヤ会のワークショップは予想をはるかに上回る来場者があり、盛会に終わりました。浜松医科大学眼科の堀田喜裕教授、浜松医科大学耳鼻咽喉科講師の岩崎聡先生も大変驚いた様子でした。きてくださった皆さんに感謝するとともに、準備にかかわった方々全員に感謝申し上げます。

 私たち、視覚だけでなく聴覚にも障害を持つ者たちは、同じ網膜色素変性症という患者の中でもまたさらに疎外感を感じることがあります。視覚障害の方には視覚で得られない情報を聴覚でおぎなっている方が大勢いらっしゃいます。そのような手段も、我々は苦手とします。そして、このような不便さはまた理解されにくく、困ることが多々あります。これは視覚障害者が晴眼者に向かって理解してくれと訴えていながら一方で、視聴覚障害者を理解できない状況を生んでいます。こういったことはお互いが不幸ですし、残念なことです。

 私たち自身も聴覚障害のことを理解してくれと言いながら、実はほかの障害の事をまるでわかってない現実があります。今回、NPO法人視聴覚二重障害者福祉センター「すまいる」理事長の門川紳一郎氏にもパネラーとして参加していただいて、盲ろう者としての立場からお話を頂いたのは大変有意義でした。来場者も感激していたようでした。

 これは実は奥の深い話にもつながってきます。それは常に相手の立場になって物を考える難しさのことです。私たち視覚障害者、視聴覚障害者はまったく違う障害、例えば脊髄損傷の方々の苦労は分かっていますか?喉頭癌などで声を失った人たちのことは?脳神経障害のひとたちのことは?心臓疾患でペースメーカーを利用している人のことは?糖尿病で人工透析のことは?身近な例で行くと同じ視覚障害でもベーチェット病は?視神経萎縮は?このように私たちは、他の立場の人たちのことをまだまだ分かっていないのです。それに加えて、昨今は世間一般が相手の立場を思いやるという意識が薄い気がします。ここのところの残虐な事件の数々。一流企業のごまかし事件、北朝鮮の拉致問題による政府の対応など、どれも相手のことを考えてない状況が生んできたものなのではないでしょうか。

 一体どうして、このような社会になってしまったのでしょう。私が10代の頃から人には優しく、とか(話は飛びますが)環境にやさしくとか、いろいろなところで言われ続けられてきているのに、一向によくなりません。むしろ悪くなっているような気さえします。

 この原因は物があふれていることによるのかなと思います。つまり物があふれると人は我慢が出来なくなってきます。物を与えられ続けるとあるのが当然、もらって当然、社会は自分が中心で回っていて相手のことを考えなくなるような気がします。心理学の専門家ではないので詳しいことは分かりませんが、人の心には欲望的な子供の心とか、優しさの母親の心とか、規律を守る父親の心とか、さまざまな要素が交じり合っていると聞きます。そのバランスが崩れたときに性格の偏りが目立つといいます。つまり、欲しいものを思いのままも欲しがる、自分の欲求が満たされれば良いという子供の心が強くなっているような感じを受けます。

 これは最近、会員数も増え、経済的にもひところの困窮からは抜け出した感のあるJRPS、そして部会として存在が認められてきて、活動費の心配がなくなってきたわがアイヤ会にも言える事で、どんなに自分たちをとりまく環境が良くなってきても、他の障害の事を忘れてはいけないということが言えるのではないでしょうか?

 アイヤ会ワークショップにたくさんの来場者をみて、アイヤ会としてのメンバーは少ないですが、難聴の方は実はもっと多いのではと思いました。岩崎先生もそのことを感じ、早速行動に移してくださり、実態調査に乗り出してくださいました。そのことは本部版「あぁるぴい」に同封させていただいたアンケートでご存知かと思います。このアンケートは結果がわかれば先生から報告があるかと思います。

 私たちアイヤ会は自分たちとおなじく難聴で悩む人たちとの連携、そして自分たちの障害を同じJRPS内はもとより、社会にアピールしていく必要があるとともに他の障害を持つ人たちのことも考え、理解しあっていかなければならないとしみじみ感じました。アイヤ会の存在はただ、難聴のグループがJRPSの中にあるということだけでなく、もっと大きな意味があるのではないでしょうか?最近は本部もそのことを分かってきてくださり、先の世界会議でのスクリーンによるPC通訳へ全面的な協力という形になって表れました。大変ありがたいことです。

 そして、さらなる理解を得るためにはアイヤ会がもっと、能動的に変わっていかなければならない時期に来ていることも痛感します。JRPS全体にも言えることですが、一部の人間だけに頼りっきりという状況は打破しないといけないのではないでしょうか?アイヤ会もアイヤ会版「あぁるぴい」の編集を岩佐氏に全面委託したように、メンバー全員が参加意識を持って、取り組むべきものと考えております。そのためにアイヤ会は変わっていきたいと思います。みなさんもご期待ください。と同時にいろいろと変えてください。よろしくお願いします。


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