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●無β・リポタンパク血症

匿名希望


無β・リポタンパク血症(abetalipoproteinemia)は、1950年にBassenとKornzweigがはじめて報告した。無β・リポタンパク血症の要因としてのミクロゾームトリグリセリド転移タンパク質(MTP)における分子欠損であることが確認されている。特徴はセリアック症候群(celiac diseaseと同義語。セリアック病=小児脂肪便症)、網膜色素変性症、進歩的な運動失調性の神経障害、および有棘赤血球増加症の異名を取る赤血球の先天性異常があり、通常、常染色体劣性のまれな遺伝性疾患である。食事などによる脂質の腸内吸収は不完全で、そのため、幼年期からの脂肪便がある。徴候は、フリードライヒ失調症に似ており、精神遅滞、脊髄小脳変性、脊柱側弯症などの報告がある。また、非定型的網膜色素変性症という表現も使われている。塩基性の欠陥は、低比重リポタンパク質(LDL)と超低密度リポタンパク質(VLDL)および、カイロミクロンのapoBペプチドを合成する能力のなさであると考えられ、β・リポタンパクはまったくない。また、この疾患の徴候の多くはビタミンA・ビタミンD・ビタミンE・ビタミンKなどの欠乏の結果であると考えられ、特別な治療法はないがビタミンEとの治療が推奨されている。男女両方に発症するが男性のほうの割合が高いという報告もある。

※参考文献
#200100 ABETALIPOPROTEINEMIA; ABLほか
※サーチ件数(サーチ日 2007/8/6)
“abetalipoproteinemia” 約 97,100 件
■参考
無β・リポタンパク血症(abetalipoproteinemia)の同義語として、有棘赤血球増加症、Bassen-Kornzweig症候群(バッセン・コーンツバイク症候群)、アポリポタンパク質B欠乏、ミクロゾームトリグリセリド転移タンパク質欠乏症、そのほかがある。変異した遺伝子がマッピングする遺伝子座は、4q22-q24。筆者が調べた文献では、“pigmentary degeneration of the retina(直訳は、網膜の色素変性)”だったが網膜色素変性症と訳した。ただし、網膜色素変性症の記載のない文献も多くあって、無β・リポタンパク血症における眼疾患についてはまだまだ勉強する未知の部分が多い。

(作成日:2007/8/6)


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