あぁるぴぃ千葉県支部だより18号


■視力検査について■

千葉県立佐原病院 視能訓練士 鍋島 亜美子
 みなさんが眼科を受診する際にさまざまな検査を受けます。特に、視力検査や視野検査はしばしば行なわれます。視力があまり変わらないのに、毎回同じような検査をするので、何故毎回やらなければいけないのだと思う方もいると思います。ですが、視力検査は眼科の中で大事な検査ですので、見え方が変わらないという場合でも、変化を見ていくためのデータとして残しておく必要があります。
 ひとくちに視力といっても、遠視や近視などの屈折や病状が絡んでくるので、同じ視力でも人によって見え方が違います。
 まず、屈折検査と視力検査の違いをお話します。屈折とは、遠視、近視、乱視の度数のことを表します。正視は網膜上にピントが合うのではっきり見えますが、遠視はピントが網膜の後ろに合い、近視は網膜の手前にピントが合うので、網膜上に映る像はぼやけて認知されます。ピントを合わせる要因には、角膜のカーブ、水晶体の屈折力、眼軸の長さ(眼軸長)、調節力などが関係します。遠視と近視は眼軸長が影響していることが多いです。遠視の目は眼軸長が短いので、ピントが網膜の後ろで合ってしまいます。逆に近視の目は眼軸長が長いので、網膜が遠くなって、ピントが手前に合ってしまってぼやけて見えます。乱視は縦と横と斜めのピントが網膜上にそれぞれ異なって映ってしまうために、像がダブったりゆがんで見えます。その屈折がどれくらいあるかを調べるのが屈折検査です。屈折は、眼球の大きさや形、水晶体や目の筋肉がピント合わせをする力、角膜の形などが関係する、簡単にいうと眼球自体の能力と性質を表すものです。遠視は凸レンズを使ってプラスで表します。近視は凹レンズを使ってマイナスで表します。
 遠視の凸レンズは円いレンズの中心が厚く周りが薄くなっています。このレンズは拡大作用があるので、ルーペにも使用されています。視力だけが悪い患者であれば、凸レンズを厚くしていくことによって文字が拡大され、視力が獲得されます。視野が狭いRPのみなさんは、倍率を高くしていくと視野から文字があふれてしまい、かえって読みにくくなることがあります。その点、拡大読書器は倍率を上げても視野が狭くならないので、RPの方でもルーペよりは見やすくなります。
 近視の凹レンズは、凸レンズと逆に中心が薄く周りが厚くなっています。このレンズは集光作用があるので、像が小さく映りますが、その分視野は少し広がります。この原理を利用して、凹レンズを目の5センチから10センチくらい前に当てて遠くの景色を見ると、少し視野が広がって夜景などがきれいに見えます。
 次に乱視のレンズです。乱視というのは、縦と横もしくは斜めでピントが違うので、例えば、縦方向は度を合わせずに、横方向だけ度を合わせる、ということになります。触るとわかりますが、縦方向が薄ければ、横方向がカーブを描いています。これを円柱レンズといって乱視の矯正に使用します。乱視にもプラスレンズとマイナスレンズがありますが、少し話が難しくなりますので今回は説明を省きます。ここまでが屈折検査です。ここからは視力検査について説明します。
 視力検査とは、屈折を矯正することによって、その人がどれくらいの大きさの視標を見る力があるかを調べる検査です。視力の分類の仕方はいくつかあります。まず、ランドルト視力とひらがな視力です。ランドルト視力というのは、円い輪が切れている視標を使います。これは国際眼科学会で決められた視標でランドルト環と命名されています。ランドルト環の切れ目の幅を視角として、それが見分けられる視力を数字で表します。例えば、1.0のランドルト環では切れ目の目に対する角度が1分となっていて、0.1のランドルト環ではその角度が10分となっています。ひらがな視力はランドルト環に相当するものを視標にしたもので、両方とも単位はなく、1.0、0.1、0.01のように表します。
 次に遠見視力と近見視力です。遠見視力は5mで測定するもので、みなさんが眼科でしばしば行なう検査です。近見視力の値は30cmで測定したものになっていますが、メガネを作る際に近見視力を測る場合は、実際に近用メガネを使用する距離で度数を合わせるので、検査距離を30センチで行なわないこともあります。その場合、値を換算したり、測定距離をカルテに記入したりします。
 次は字づまり視力と字ひとつ視力です。字づまり視力は並列視標という字が並んだ視力表を使います。普通の視力表です。子供や弱視の人などは字が詰まっていると、読み分けが困難で視力が悪く出ることがあります。そのようなときは、字ひとつ視標という1枚1文字の視標を使って測ります。RPの人は視野が狭いので、字ひとつ視標にするとどこに出したかがわからなくなるので、字づまりのほうがわかりやすいようです。
 次は中心視力と中心外視力です。中心視力というのは網膜の中心窩(か)で見たときの視力をいいます。中心外視力というのは中心窩以外で見たときの視力です。中心窩は1ミリもないかなり小さな部分ですが、読むという機能にとても重要な部分ですので、そこに障害が起きると視力が0.4か0.5くらいしか出ません。中心窩の周りに黄斑部というところがあり、そこに障害が起きると0.1くらいしか見えません。逆に、中心窩の周囲でかなり広い範囲に障害が生じても、中心窩に問題がなければある程度の視力は保てます。RPの患者が視野がかなり狭いにもかかわらずある程度の視力が維持できているのは、網膜の周辺には病変が起こっているけれども、中心窩には異常がないためです。逆に、黄斑変性症という病気は中心窩がやられてしまうので、視野の広さはほとんど正常ですけれども、視力は0.1前後になってしまいます。
 同じ見えないということでも、病気とかやられているところによって見え方が違ってきます。ですから、同じ視力でも「歩くのは困らないが新聞が読めなくて困る」人と「歩くのに困るが新聞は読める」という人がいます。
 最後に小数視力、分数視力、LogMAR視力について説明します。小数視力は5mで測定したときの最小視角の逆数で表します。これは国際的な標準視力表示方式で、1.0とか0.5というように表します。例えば、視角1分のランドルト環ですと、逆数で表すと1.0となるので、これが5mで見えると1.0になります。視角10分のランドルト環が5mで見えると0.1になります。
 視角というのは、像の両端が目に入ってくる角度をいいます。視角10分のランドルト環では、切れ目の幅が15mm、円の大きさが75mmです。視角1分のランドルト環では切れ目の幅が1.5mm、円の直径が7.5mmになっています。
 分数視力というのは、分母にその人の検査距離、分子には検査に用いた視標を視力1.0の人が判別できる距離、を用いて表します。これは欧米で使用されていますので、欧米の文献を読むと分数視力で表されていることが多いです。例えば、20/40ですと、視力1.0の人が40フィートで見える視標をその人が20フィートで見えたことを表します。視力1.0の人が60フィートで見えた視標が6フィートで見えた場合は、6/60で表します。分数視力の方が、検査をした距離をそのまま用いて表すので、分数視力のほうが応用が利くといえます。
 次はLogMAR視力です。これは最小視角(分)の対数で表します。小数視力は最小視角を逆数で表したもので、視角に反比例しますから、0.9が1.0になったときと、0.1が0.2になったときの視力の差が等間隔ではありません。LogMAR視力を用いると、各視力の間の差が等間隔になります。詳しい説明は省きますが、視力が悪い場合にLogMAR視力を用いると細かい変化がわかりやすいので、最近ではロービジョンを行なう眼科ではLogMAR視力を使うことが多くなってきています。
 具体的にLogMAR視力を数字で表すと、視角1分のランドルト環では対数がlog1ですから、視力は0.0になります。視角2分のランドルト環ではlog2で、0.3になります。視角が10分の場合にはlog10で、視力は1.0になります。ですから、小数視力が小さくなる、つまり視力が悪くなるほど、LogMAR視力では数値が大きくなります。
 ここから視力検査の進め方についてお話します。みなさんは視力検査をするときに、家や気球や飛行機がぼやけたりはっきりする器械を覗いた事があると思います。その器械がオートレフラクトメーターといって、屈折の度数(遠視・近視・乱視)がどれくらいあるかを測るものです。この器械をこれからレフと省略します。屈折の度数は、視力の検査でレンズを換えていくことによってわかるのですが、何も情報がない状態から始めると時間がかかるので、レフでだいたいの度数を測ったあとで、そのデータを基にレンズを入れて微調整していきます。この器械は網膜像のボケを利用して測るので、白内障で濁っていたり、網膜が出血したりゆがんでいると、正確に測定することができません。そのときは裸眼の視力からレンズを入れて測っていきます。レフで他覚的に度数を求めたあと、レンズを入れて矯正視力検査を行ないます。矯正視力は眼科の診療においてたいへん重要なデータで、眼科では矯正視力で視力の良し悪しを判断します。つまり、かなり高度な屈折異常があっても矯正視力が1.0以上出ていれば視力で問題はなしとされます(裸眼視力というのは眼科の方ではあまり重要なデータではありません)。また、よく目を細める人がいますが、目を細めると屈折の度数が変わって、正確な視力検査ができません。また、同じ見えないという答えでも、切れ目がまったく見えないというのと、はっきりとは見えないというのでは、検査の結果に差が出てしまいます。ですから、視力検査を受けるときには目を細めないで、切れ目がうっすらでもわかったら答えるようにしてください。
 器械で測る屈折検査や医師が眼の状態を観察する眼底検査と違って、視力検査は自覚的な応答を必要とするので、たずねるほうの意図と答えるほうの理解が異なると、正確な視力が測れません。また子供や意思の疎通が困難な人ですと正確な結果が得られないこともあります。そういった意味では正確に測ることが難しい検査といえます。

 ここからは私たち視能訓練士が患者からしばしば受ける質問について答える形でお話します。
Q1.自分では見え方が変わっていないのだが、毎回検査を受けなければならないか?
A1.RPの方は視力が0.1とかそれ以下で固定している人が多いかと思います。しかし、裸眼視力や矯正視力が変わっていなくても、白内障があったり、眼底に出血があったり、網膜のゆがみがでてきたりということが原因で屈折が変わっている場合があります。また、矯正視力が保たれているか、急激に低下していないか、日によって変動しているか、ということも経過を見ていく上での情報となります。このように、矯正視力はとても重要な検査ですので、指示があった場合には受けるようにしてください。

Q2.見づらくなったと感じるのに視力は前と同じなのか?
A2.これは特に弱視の人から良く受ける質問です。視力が変わらなくても、網膜や視野が変化したり、白内障が進んだということで、同じ0.1でも見づらく感じることもあります。また先ほどお話したように、小数視力というのは最小視角の逆数で表しますから、1.0が0.9になったときよりも、0.2が0.1になったときのほうがその差を大きく感じます。ですから、同じ0.1でも0.2寄りと0.09寄りの0.1では確かに差を感じます。視力が悪いほど小数視力では評価の差がわかりにくくなるので、最近ではLogMAR視力を用いるところも増えています。そのほか、コントラストによって見え方が違うこともあるので、コントラスト視力表とか縞視力表を用いることがあります。コントラスト視力表というのは、濃淡がいろいろある視力表です。これを使うと、例えば0.1で変わらないという人でも、前回は濃いのが見えたけれども今回は薄いのしか見えないということがわかったりします。

Q3.私は遠視ですか? それとも老眼ですか?
A3.遠視、近視、乱視というのは屈折異常といって眼の構造によるものです。老眼は加齢に伴って毛様体という筋肉が衰えたり、水晶体が硬くなって、ピント合わせをする機能が衰えるために起こる加齢変化です。これは40歳ごろから誰にでも起こる変化です。私は近くが見えるから老眼でないとか、遠視の人は老眼になりやすくて、近視の人はなりにくいと言う人もいます。確かに軽い近視の場合にはメガネを掛けなくても手元のものにピントを合わせやすいので、老眼鏡を掛けなくても新聞などを読むことができます。一方、軽い遠視だと、遠視はピントがどこにも合いにくいので、水晶体や毛様体筋で調節して見ているのですが、調節する筋肉が衰えると、メガネを掛けないと見えなくなりますので、老眼を自覚する年齢が早くなることがあります。遠視と老眼は別の問題で、老眼はみなさんに起こる現象で病気ではありません。

Q4.私の遠視はいくつですか。
A4.本来ならばプラスいくつですと度数で答えるべきでしょうが、質問する人が知りたいのは視力がいくつあるかということがほとんどですので、私は「裸眼で0.5です。レンズを入れると1.0です」と答えます。さらにレンズの度数をたずねられた場合には度数をお知らせします。インフォームドコンセントの点では、度数と視力まで細かく話すべきなのですが、一時、それを試みたところ、「遠視ってなんですか?乱視って治るのですか?」とか、「近視ってどんどん進むのですか?」などと質問攻めにあってしまい、検査が進まず、他の患者さんからもまだかまだかという視線を受けてしまい、困った事があるので、私はとりあえず視力を教えることにしています。視力と遠視や近視といった屈折を混同している人が多いからだと思います。

Q5.私は遠視と近眼です。
A5.検査時に「どうしましたか?」とたずねると、こう答える人が結構多くいます。眼科関係者で遠視のことを遠目と言ったり、近視のことを近眼ということがあるのですが、近眼というのは近くは良く見えるが遠くはよく見えないという近視のことです。近くが良く見えない老眼のことを近眼と表すことはありません。近くが見えないから老眼のことを近眼と思われる人が多いようですが、近眼とはあくまで近視のことで老眼ではありません。遠視性乱視や近視性乱視といって、遠視や近視があってかつ乱視がある場合があります。また、軽い遠視があって調節緊張といってピント合わせを過度に働かせる目の場合には遠視になったり近視になったりすることはあります。しかし、遠視性近視という言葉はありません。「私は遠視と近眼です」という患者は近くが見えないという意味で、老眼を近眼といっていることがほとんどで、実際は「私は遠視と老眼です」と言いたいのだと思います。

Q6.遠視は遠くが見えて、近視は近くが見えるのか?
A6.遠視はピントが網膜の後ろに合うので、自分でピントを合わせることが困難です。要は遠くも近くも見づらい目です。ですが、そのようにお話をすると「私は遠視だけれども、裸眼でも遠くも近くも良く見える」という人もいます。軽い遠視の場合や調節力といってピント合わせが強く働く人は、毛様体という筋肉に力を入れて水晶体のレンズを膨らませることによって、後ろにあるピントを網膜の上にうまく合わせるので、遠くも近くも何とか見ることができます。しかしそれだけ筋肉を使うので、目が疲れやすいとか、筋肉が衰えてくると老眼の症状を自覚しやすくなったりします。また、子供の場合にかなり強い遠視があると、ピント合わせを一生懸命することによって目が寄ったりすることがあります。近視の場合には網膜の手前にピントが合いますから、かなり高度な近視でなければ、近くのものは見えるのです。割合的には近視の人が多いので、遠視といわれてもピンと来ない人が多いのですが、元々赤ちゃんの場合には少し遠視寄りになっています。従って、子供の場合には遠視が多いのですが、成長するに従って近視化していくので大人になると近視の人の割合が多くなります。

Q7.2.0見えるから遠視か?
A7.2.0とか、1.5というのは、あくまで視力ですから、軽い近視の人であれば2.0見えることもありますし、遠視でもかなりひどければ、0.1しか見えないこともあります。先ほどから言っているように、遠視や近視ということと視力とは別のものです。

Q8.ひらがなだとわかるが、円の切れ目はわかりにくい。
A8.ひらがな視標はランドルト環に基づいて作られているのですが、正答率が高いようです。特に弱視の人でそう感じます。円よりひらがなの方が想像がつくからだと思います。ひらがな視力を使うときもありますが、国際眼科学会で決められた視力の定義が、2点の切れ目がかろうじてわかるものということなので、ランドルト環を用いて検査するところが多いです。統一性があるので、私もランドルト環を使うことが多いのですが、例えばメガネ合わせとか、ロービジョンの補助具を選定する場合には、文字を読めるかということが重要になってきますので、ひらがな視標を使うことが多くなります。

Q9.細めると見やすい。目を動かすと見やすい。
A9.近視とか乱視がありますと、目を細めると焦点が深くなって、ピントが網膜上に合いやすくなります。近視の人は多いですから、「細めてもいいか?」とか、「細めると見やすいのです」、ということをよくおっしゃいます。また、視野欠損があると、目を動かした方が見やすいことがあります。普通は中心が見えますからまっすぐ見たほうが見えやすいのですが、黄斑変性だったり、糖尿病などで眼底のあちこちに出血が起こってしまうと、顔を傾けると視力が出やすいということがあります。視力というのはまっすぐ前を見て測るのが原則です。矯正するときも顔を曲げるとレンズの厚みが変わるので、屈折の度数も変わってきますから、顔を曲げてしまうとある意味では正しい視力が測れません。しかし、その人がもつ視力がどれくらいあるかということも知りたいので、視野の真中が欠損していたりする場合には、顔を動かして測るか、私たちのほうで視標を動かして測ることがあります。

Q10.視力検査室では視力が出るが、家や屋外ではそのときによって見えたり見えなかったりする。
A10.これはRPの方がよくおっしゃることです。RPの症状で暗順応の低下があります。暗いところに入ると見づらくなります。検査室では明るさが一定なので、特に視力に変動はないのですが、明るい待合室から暗い検査室に入ってすぐ検査したり、逆に暗い部屋から明るい検査室に入ってすぐ検査すると、視力が変動することがあります。もちろん外では明るさが違いますから、それによって見え方が変わってきたり、歩いていて日向や日陰に出たり入ったりすると見え方が違ってきます。視力検査というものは決められた条件で行なうものなので、日常の見えにくさまではデータ化することはできないのが難点です。

Q11.電気のついた視力表だと見づらい。
A11.網膜疾患があったり、白内障があると、電気がついている視力表だとまぶしくて見にくいということがあります。視力というものは決められた明るさの下で出された値です。条件を変えて測ってしまうと、毎回の比較ができなくなるので、とりあえず決められた一定の条件で測ります。違った条件であればもっと視力が出るということを知りたい場合には、視力表の電気を消したり、字ひとつ視力を測ったり、部屋の照明を落として測ることもあります。

Q12.屈折以上は進む?治る?
A12.これは成長期の子供とそれを過ぎた大人では意味合いが違ってきます。赤ちゃんは元々遠視で、子供のころは眼球が小さく、屈折異常のない子供でも遠視です。成長するに従って目も大きくなっていきますから、少しずつ遠視の度が減っていきます。ですから、高度遠視がある子供でも目が大きくなるに従って遠視は治っていきます。逆に近視の子供の場合には、成長によって目が大きくなると、眼軸長が大きくなっていきますので、近視は進んでいきます。また、近視でメガネを掛けないで長時間近見作業をすると、近視の進みが速くなります。そこで、軽い近視でもメガネを掛けたほうが近視の進みは少なくなります。よく母親が子供の近視の度数が進むことを心配しますが、進む量というのはある程度決まっています。しかし、メガネを掛けないと進みが速くなって、マイナス3ですむものが、マイナス5になったり、マイナス7になったり、調節機能が乱れてしまうこともあります。ですから、細めると見えるからといってがまんせず、眼を使う時にはなるべくめがねをかけたほうが良いです。このように、成長期に遠視の度が減ったり近視の度が進むのは、成長によるもので、病的なものではありません。
 逆に大人に起こる屈折異常は、白内障があったり、病気があって起こることが多いので、白内障の治療をするとか、眼底の出血を止めるとか、病気の治療によって治ることもあります。そして、病状が進行しても屈折が変わらない場合もあるし、進む場合もあります。ですから、屈折異常が治るというよりは、病気を治した結果として屈折異常が治ることもあるといえます。RPの人は視力が落ちていくことがありますが、これは屈折異常ではなく網膜の異常が進んだことによります。老眼も40歳くらいから近くが見えなくなってきます。目が悪くなったと心配する人もいますが、これは度数が変わるというよりも、目の調節力が減っていくのを補うためにレンズの度数を増やしているだけです。パソコンなどの普及によって若い人が目を使うことが多くなって、最近は30代でも老眼の症状を感じる人が増えてきているようです。

Q13.私は弱視ですか?
A13.眼科では矯正視力が1.0あれば視力に関しては正常とみなします。弱視にも色々な分類があります。社会的弱視という分類は、「何らかの疾患があり、両眼ともに視力が不良。そのためぜんぜん見えないわけではないが、普通の人に比べて視力が不良であるもの」という定義になっています。従って、みなさんの場合、RPという疾患のために視力が出ないので、社会的弱視ということになります。両眼の矯正視力が0.04以上で0.3未満だと教育的弱視という分類もあります。これは盲学校の入学基準になります。視覚障害者手帳の基準とは異なります。子供で0.03未満の場合は、弱視学級とか盲学校を薦める場合もあります。子供で0.1とか0.2でも日常生活に困っていない場合は、普通学校に行って他の子と同じように過ごしていることも多いようです。大きく分けると社会的弱視と医学的弱視という分類の仕方もあります。医学的弱視というのは「乳幼児が発達していく過程において、視力の発達が押さえられたもの」となっています。例えば、屈折異常があって、網膜にピントが合わなかったり、斜視といって目が外に向いていたり、内に寄っていたりするものです。片方の目が寄っているために、目を使うことをサボってしまって、視力が出ない場合もあります。これらが医学的弱視という分類になります。この場合には0.8や0.7という視力があっても、発達過程において視力の発達が押さえられていますので、弱視という診断名がつきます。
 大人になって視力が低下して、0.1になっても弱視という診断名はつきません。病気に伴って起こったものなので、診断名としては、網膜色素変性症とか、白内障とか、近視とか、遠視という診断名がつきます。
 ひとくちに弱視といってもいろいろな分類の仕方があって「あなたは社会的弱視の点では弱視ですが、医学的な面では弱視ではありません」と説明しても患者さんもわけがわからないと思いますので「矯正しても視力が出ませんので、弱視です」と簡単に説明するようにしています。私の経験では、「私は弱視です」と言う人の半分以上は、実際はメガネを掛けると1.0出ることが多く、本当に弱視の人はあえてご自分で「私は弱視です」と言う方は少ないように思います。


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