あぁるぴぃ千葉県支部だより55号


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★熊本旅行記(第4回)

市原市 石川 隆
◇第17回全国盲ろう者大会4日目 8月20日(月)
 平成19年8月17日(金)から20日(月)の日程で行われた第17回全国盲ろう者 大会に参加するため、熊本に行ってきました。
 全国盲ろう者大会の目的は、「全国の盲ろう者や、通訳・介助者などが集い、交流を深 める」ことです。宿泊しながらの交流がもっとも楽しみな大会です。
 7月末に腰を痛めて思わしくないまま参加した全国盲ろう者大会は3日目ですべてを終 了し、最終日の4日目は熊本城を観光するため、熊本市内のビジネスホテルに宿泊しまし た。
 4日目は朝7時に起床。本当は6時に起きる予定でしたが、寝坊してしまいました。時 間を見たら7時をまわっていたので、急いで起きて、顔を洗って、荷物を整理して、迎え がくるのを待ちました。
 7時30分に迎えにくるはずの女性陣もどうやら寝坊したようです。15分オーバーし て迎えが来ました。4階(だったかな?)に行き朝食。9時前にホテルをチェックアウト しました。
 熊本交通センターのコインロッカーに荷物を入れて熊本城へ。熊本城は目の前に見えて います。熊本交通センターから歩いて10分で行ける距離ですが、交通センターからお城 周辺を巡る熊本城周遊バスで行くことにしました。
 熊本城はくしくも、築城四百年のお祭りの最中でした。入り口があちこちにあるそうで すが、どの入り口から入ったのかわかりませんでした。また、視覚障害者の方には、イヤ ホンで案内するサービスがあるそうです。
 熊本城の案内所で車イスを借りて、熊本城の敷地内に入ることにしました。敷地内はじ ゃり道が多く、車イスで通る度にガタガタと腰に響いて痛かったです。また、勾配が急で、 車イスでの移動はたいへんでした。
 熊本城の中に入るには石段の階段をのぼります。この石段は段差が高く、また足場が凸 凹になっていて、視覚障害者が一人で上るにはとても危険な場所でした。近くにいた係り の人に聞いたら、大阪城はエスカレーターやエレベーターはあるが、熊本城はないとのこ と。また、熊本城の中に入るにはこの石段の階段しかないとのことでした。しかたないの で、石段の階段をゆっくりとのぼって、なんとか熊本城の中に入ることができました。
 熊本城の中に入ると、熊本城主の加藤清正の肖像画をはじめ、熊本城や船の模型などい ろいろなものが展示されていました。1階と2階を見て、天守閣まで行こうと思いました が、時間がなかったので、天守閣はあきらめました。最後にお城の前で記念写真を撮って、 熊本城を後にしました。
 熊本城周遊バスに乗って熊本交通センターまで戻り、近くのレストランでお昼を食べま した。コインロッカーから荷物を出して、いよいよ熊本ともお別れです。
 熊本交通センターからリムジンバスで熊本空港へ。飛行機に乗るまで時間があったので、 熊本空港でお土産を買いました。また、羽田空港で借りる車イスをお願いしました。お土 産に買った熊本ラーメンは家で食べましたが、スープがあっさりしていてとても美味しか ったです。
 羽田空港に着いたら、ANAの若い女性の職員の方が車イスを用意して待っていてくれ ました。車イスに乗り、羽田第2旅客ターミナルの東京湾アクアライン高速バスの乗り場 に向かいました。五井駅行きの高速バスは1時間に1本しか出ていないとのことでしたが、 なんとか5分前に着いて、高速バスに乗ることが出来ました。
 高速バス、内房線に乗り継いで、我が家に帰ってきました。家に着いたのが19時30 分でした。夕食を食べて、お風呂に入って、メールをチェックして、足が筋肉痛で、足が 思うように動きませんでした。腰も痛くなってきたので、その日は早く寝ました。
 全国盲ろう者大会の参加は4回目ですが、毎年、顔なじみが少しずつ増え、また、1年 ぶりの再会が出来て、熊本はとても楽しかったです。来年は広島です。広島の美味しいお 好み焼きを食べながら交流を深めたいと思います。つたない文章を最後まで読んでいただ きありがとうございました。


★アンニョンハセヨ! 私の初めての海外一人旅(第5回)

千葉市 佐々木 貞子
 「アンニョンハセヨ」とは、「こんにちは」という韓国語です。私は昨年9月4日から 4泊5日で韓国の首都ソウルに行ってきました。初めての海外旅行でしたが、ツアーとは いえ、サポートが約束されていない全盲の一人旅。私にとって小さな冒険旅行でした。
 さて、いよいよ帰国の日が来ました。冒険旅行ももうすぐ終わりです。
 今朝は晴れ。DPI世界大会は明日が最終日です。朝日の差し込むホテルのロビーは大 会会場へ向かうバスを待つ人、大きな荷物を持って帰路へつこうとする人、様々です。こ のホテルから成田への復路便に乗るため、集まったのは私を含めて5名。先ず、同室だっ たEさん。彼女は松葉杖を使っています。そして、大学生のUさん(車いす使用)と彼女 をサポートしながら同行したYさん。思わず「吉本ですか」と聞きたくなるひょうきんな 男性、Hさん。出身は大阪ではなく京都だとか。この3人とは往きの飛行機が一緒で、ソ ウルに着いて夕食を共にしましたが、それ以降は別行動だったので、3日ぶりの再会です。 帰りの道中も楽しくなりそう。
 ところが、準備万端で待っていたのに、仁川(インチョン)国際空港行きのチャーター 便は出発時間をとうに過ぎても到着しません。何かの手違いでバスが遅れているようです。 旅行会社の担当者は困ったような声。「飛行機は待ってくれないね」とHさん。やれやれ、 最後までハプニングだわ。私はあきれるやら、おかしいやら。
「いざとなったらタクシーで行くしかないですね」
「そうなるとタクシー代は旅行会社持ちですよね」
 そんな話をしている間に時は虚しく過ぎて・・・。やがて担当者が「やむを得ないので ・・・」と言おうとするまさにその時、やっとバスが着きました。「それでは、気をつけ て」彼女はホッとしながら私たちを見送りました。バスの中は私たちと、言葉の通じない 韓国人の運転手さんだけ。バスに揺られながら「これでちゃんとインチョンに着くんです かね」というHさんに、「もしかして、キンテックス(世界大会の会場)に行っちゃった りして」と私。5人は笑いころげました。
 さて、無事空港に到着。手続きを終え出発までにはまだ時間があり、目の前の広いロビ ーにはたくさんのお土産屋や免税店が並んでいます。Hさんが「じゃ、買物タイムですね。 僕、Eさんと行くので、UさんとYさん、佐々木さんと行って」とてきぱき指示。
「えっ、いいんですか!」
 私はもう、とてもうれしくて。どう展開するか予想できなかった一人旅。お土産は何も 買えない場合に備えて、旅行会社から届いたカタログで出発前にいくつか注文していまし た。旅行中、サポートには不自由しなかったものの買物の機会はなく、私はまだ現地でお 土産といえるものは買っていませんでした。あきらめていたショッピングができるなんて 感激です。Yさんが押すUさんの車いすの背もたれに私がつかまり、3人はお店を回って 食料品や本を探したり、ブランドのお店でため息をついたり・・・。Yさんはさりげなく、 そして要領よく商品を説明してくれます。私はエルメスのスカーフを手にとり・・・。も ちろん見るだけで買わずに通り過ぎ、キムチや人形を母と友人に買い込みました。そして 自分へのお土産も一つ・・・。
 「旅は道連れ、世は情け」といいますが、この旅行で得たものは素敵な人々との出会い とたくさんの優しさです。そして何より学んだことは人とのかかわり方、距離のとり方で した。とくに眼が見えないと、人に手伝ってもらうことは当然多くなります。私は関り方 の中身というか、互いにとって円滑で快適な付き合い方にこだわります。サポートを受け る時、自分の希望を相手に正確に伝える工夫は大事だと思います。やってほしいことと、 やってもらうことがすれ違えば、お互いに不幸です。手助けした人の努力も報われないの ですから。そして感謝の思いはきちんと伝えたいものです。不自然なほど頭を下げる必要 はありませんが。「良かった!」という心からの笑顔があれば、きっと伝わることでしょ う。
 また、自分がサービスを購入し、消費者としてサポートを受ける場合と、そうでない時 では、相手との関係性や求めることが変わってきます。それを混同してしまうと、ていね い過ぎるお礼を言って「お客なのに何故?」といぶかしく思われる一方、隣人の親切に寄 りかかり、介助者と勘違いしているのか、と相手が負担を感じることになりかねません。 私は旅の中でそんな光景に出くわしました。
 一方、「人に頼らず、何でも一人で。それが自立」という考え方もありますが、障害の 有る無しに関らず、暮らしの中で人は誰も一人では生きていけません。世の中には「自分 の頭のハエを追えない人は・・・」と、自分のことができない人は半人前という固定観念 や、「人に迷惑をかけたくない」という考え方が存在しています。私たちはそれを意識し 過ぎ、できる・できないという物差しで、人の価値を測り、自分を低く評価してはいない でしょうか。あるいは頑張りすぎて、何気ない助け合いの機会を失ってはいないでしょう か。
 リハビリテーションで身辺自立の訓練を行なうことがあります。障害があっても自分の 持つ力を発揮させるために大切ですが、限界もあります。どんなにリハビリをしても、障 害のない人とまったく同じにはなりません。例えば脊髄に損傷を負ってしまうと、障害を 受けた脊髄の下位にある手足はリハビリをしても思うようには動きません。
 では一生自立はできないのでしょうか。私は生活の多くに介助を受けながら、仕事を行 なったり、みんなのリーダーだったり、子どもを育てたりと、障害のない人と遜色ない、 いえそれ以上に社会的に素晴らしい活躍をしている人や、イキイキと魅力的に生きている 障害のある人々にたくさん出会ってきました。結局、自立とは自律。自分を律することで あり、1人の人間として誇りを持ち、自分の生き方を自分で選び、自分なりに生きていく ことではないでしょうか。その意味で、自立とは障害の有無にかかわらず、すべての人に 共通する課題なのかもしれません。
 しかし、障害があると一般の人と比べ日常生活にかなりの制限を受け、選択の幅も狭く なり、不利益をこうむることが多くなります。以前は「障害があるから仕方がない」と思 われていましたが、障害があっても、その人の置かれた環境や支援のあり方によって、そ の人生の質は大きく変わるのです。重度の障害があっても、自ら決定することを最大限に 尊重される社会でなければならないと思います。障害のある人も社会の一員として当然に 受け入れられ、恩恵的援助や家族の庇護という不自由な形ではなく、ごく当たり前のこと が当たり前にでき、その人が望む場所で、望むサービスを受け、普通の人生を送っていく ことを権利として認めていくことが必要なのです。障害のある人の権利が保障される社会 は、すべての人の人権が尊重される社会だと言えるのではないでしょうか。国連で採択さ れた障害者の権利条約は、まさにそのことが明記されているのです。
 すでに発効に必要な20カ国の批准は達成され、5月3日に条約は発効し、障害者の権 利条約が国際法として効力を持つことになりました。日本では、昨年9月の署名後、現在 政府内で批准に向けて検討が進められています。
 条約に書かれた理念や内容を十分に踏まえ、形骸化されることなく、国内法の改正が実 施されることが必要と言われています。条約が批准されれば日本で憲法に次ぐ法規範とな り、障害のある人にかかわる様々な場面で大きな影響を与えることとなるでしょう。条約 や法律は、日々の暮らしとかけ離れているように感じますが、現実を変えるための道具で あり、力ではないでしょうか。この力を身近に引きつけて活用するか、絵に描いた餅にな るかは、私たち一人一人にかかっているのかもしれません。
 家のリビングに飾った、青いチマチョゴリを着た人形が微笑んでいます。「これからだ ね」というように。


★教養講座「金融機関の窓口におけるバリアフリーについて」に参加して

市原市 広瀬 富美子
 6月20日、千葉県視覚障害者福祉協会主催の教養講座「金融機関の窓口におけるバリ アフリーについて」に参加してきました。
 この講座は、ATMのユニバーサル化により、視覚障害者が自分自身で金銭管理が出来 るようにという目的で行なわれました。
 千葉銀行から7名もの方が参加され、「ちばぎんハートフルプロジェクト」についての 講演と、「音声ガイダンス付ATMの操作手順」の説明を受け、視覚障害者が使用するに 当たっての問題点、要望など意見交換を行ないました(代筆の問題、行員の対応、店内の 点字ブロックなど)。
 講演終了後、会場から5分ほど離れた、千葉銀行四街道支店に行き、実際にATMを体 験させていただきました。操作手順を聞いただけと違い、実際に機械に触れることで、新 しい発見や問題点も見つかったようです。千葉銀行でも、いろんな意見、要望を真摯に受 け止め、改善してくださるそうです。
 千葉銀行さんが、視覚障害者の意見、要望を、ハード面だけでなくソフト面でも改善し てくださり、これが、他の金融機関へも広がり、バリアフリー化が進むことを期待します。
 なお、当日の資料を掲載する了解をいただきましたので、視覚障害者に関係する箇所を 抜粋してご報告します。
<「ちばぎんハートフルプロジェクト」について>
 平成20年1月に、ご高齢のお客さまやお身体の不自由なお客さまをはじめ、すべての お客さまに安心してご利用いただけるサービス体制を構築するため、プロジェクトを始動。 具体的には、障がい者雇用特例子会社「千葉銀ハートフル株式会社」を起点として「ハー ト」面、「ハード」面、「ソフト」面の取り組みを展開。
1.「ハート」面での取り組み
 ・「サービス介助士」の資格を取得している63名の職員数を、200名に。
2.「ハード」面での取り組み
 ・平成22年度中に、すべてのATMを音声案内機能付きとする。
 ・「千葉県福祉のまちづくり条例」に対応した店舗設備のバリアフリー化の改修工事を
  20年度は78か店で工事を実施。
3.「ソフト」面での取り組み
 ・店頭サービスのバリアフリー化として、マニュアルを策定し、全職員に周知。
 ・店舗への介助士マーク・補助犬マークの掲示。
 ・毎月、残高を点字で通知しているサービスの周知と内容の見直し。
4.その他の取り組み
 @ ちばぎんハートフル福祉基金の設立
  ・当行が基本財産を拠出して基金を設立し、毎年、福祉関連団体に助成を行なうもの。
  ・現在、認可申請中であり、まもなく正式に設置される予定です。
 A プルタブ、使用済み切手等収集活動

<音声ガイダンス付ATMの操作>
 引出、預入、残高照会、通帳記帳の手順は、受話器をとって音声案内にしたがって操作 してみてください。
注意点と参加者からの要望など
1.引出は、通帳のみでは出来ず、キャッシュカードが必要(郵便局、一部金融機関では
  通帳だけで引出ができることを伝え、通帳のみで引出ができるよう要望)
2.アスタリスクを押すと、最初からやり直しとなる。(最初の画面に戻るのではなく、
  取り消した前の画面に戻るよう要望)
3.音声ガイダンス付ATMの引出では、紙幣の選択は出来ない。(1万円の引出は1万
  円札が一枚出る)
4.通帳を入れる際は、最終記帳のページを開いて入れる。(前回ATMから取り出した
  時に、開いていたページを折っておくというアイデアもありました。また、視覚障害
  者は、最終記帳されたページを開くことが難しいので、どのページを開いて入れても
  受け付けてほしいと要望)


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