あぁるぴぃJRPSちば会報115号


■ 投稿
★ロービジョン川柳
担当 中野 早苗
 人の不幸を笑ってはいけません。それは断じていけません。ところが川柳は人がこまっているようすや、その時の表情を思い描いて笑ってしまうことがよくあります。作者がそこをねらっていることもあるので多いに笑っていいでしょう。視覚障害者の漫談家「浜田佑太朗(はまだ ゆうたろう)」さんの芸も視覚障害あるあるネタなので、健常者からは笑っていいのかしらと迷いを感じるという意見もあります。彼は笑ってもらわないと仕事にならないんですけどね。
 さて、今回の作品ですが、悪いと思いながら笑ってしまいました。川柳はたった十七文字の詞なので、作り手と受け手が同じ映像を共有できるとは限りません。今回はぜひ皆さんと映像を共有したいと思い、解説もすべて掲載させていただきました。ただ、ホーム転落の句は笑ってすますわけにはいかず、解説はまるで映画を見ているように痛みや恐ろしさが迫ってきます。ご本人がおっしゃるとおり、命あってこその川柳です。
 どうぞお楽しみください。

ペンネーム(新千葉2丁目の風)
・ありがとう 心に注ぐ エアビール
【解説】
 先日のダブルレインボー音楽会の打ち上げで、見えないのにわざわざ瓶ビールで注ぎに来てくれましたね。こぼしちゃいけない気持ちが、きっと瓶ビールの傾きの角度を弱めたのでしょう。一滴も入ってませんでしたけど、そのビールを心で飲みました。おいしい、おいしいエアビール。

・言葉より 想い伝わる 息づかい
【解説】
 疲れているとき、めんどくさいとき、退屈なとき、元気だよ、大丈夫だよ、楽しいねって言うじゃない。残念! 盲目の僕にはその息づかいに本音が見える。ちょっとした空気感は、言葉よりも伝わるということは本当だと思います。あれです「忖度」というものにつながるものかもしれないです。

・便器から とんできたのは ウォシュレット
【解説】
 トイレで流すボタンだと思って、押したらウォシュレットがお腹に放たれました。「おおっ」。しかも長い。結構びっしょりになってしまいました。生ぬるくて冷たくないけど、ものすごく残念な感じでした。

・銀行の 非常ベル音 超でかい
【解説】
 銀行のATMで、音声ガイダンスの受話器を手にして操作していたら、金額を間違えたので「取り消しボタン」を探していたら、わからなくなったので銀行の人を「呼び出しボタン」で呼ぼうとしたら、間違えて「非常用ボタン」を押してしまい、ベルがジャンジャンと銀行中に鳴り響き、警備員の人が来てパニックになりました。ボタンで色々失敗しましたが、これはかなり音が強烈でした。

・道中で 見知らぬ人から 差し入れだ
【解説】
 ギター背負って白杖をついてスタジオに向かっていたら、見ず知らずの人に話しかけられ「ちょっと待ちな」と言われて、「お茶とスポーツ飲料どっちがいい?」と言われたので、「スポーツ飲料」と言ったら、自動販売機からペットボトルが落ちる音がして、それを「差し入れだ」と言われて、もらっちゃいました。いろんなことが起きるけど、日常のささやかな「ほっと」する一こまでした。しかしそのために、途中歩数がわからなくなり、また曲がり角までもどったことは言うまでもありません。

・ホームから 落ちて気づいた その高さ
【解説】
 ある晴れた日曜日の午前9時半くらいのことです。その日は出勤で職場を開けるのは僕の役回りでした。
 千葉駅5番線のホーム(外房線)で発車ベルが鳴っていたので、あわてて快速電車に乗ろうと飛び乗ったつもりが、そこは電車の運転席同士を結合している大きな空間でした。照り返しの強い日だったので、下からの反射が明るくて車両の入口だと思ってしまったのです。背負っているカバンごと背中から落下した僕は、落ちた時一応受け身をとっていたようで、頭を軽くぶつけた感じですんだように思いました。「いたた」。線路にぎっしりと存在する角ばった敷石が、体のあちこちにささるように痛かったことを憶えています。
 一瞬上を見上げていた僕は、横を向いて現状を把握することになります。そして、すぐに立つことができた僕が、次に考えたのはなんとか上に上がろうということでした。ところが、一応目の前には「非難スペースがあるな」ということにも気がついたので「どうしよう?」と一瞬迷ったのです。
 ただ、さっきの発車ベルが止まっていてまだ電車が動き出していなかったことから、僕が落ちた状況は把握されているのだろうと思い、仕事の時間に間に合いたいという一心から、ホーム上への脱出を試みたのでした。でも、上に手を伸ばしたら170cmの僕の身長でも指がかかる程度です。ジャンプしたら手のひらから右ひじをのっけることができたので、そのまま両ひじがのっかりました。あとは胸を乗せてぐいぐいと左右に体をくねらせて、ホームに体が半分のっかりました。今考えると実に恐ろしいことで、もし電車が動き出したらこのまま、体が真っ二つなんてこともあったかもしれません。
 そしてやっと体全部が、ホームの上へ。日曜日の午前中なので待っている人はほぼいません。そのまま車両に乗り込むと、やはり、車掌さんはそれを見ていたのでしょう、電車が発車しました。
 これで、一件落着かと思いきや、問題はこのあとだったのです。なんか周りに座っている乗客が僕の顔をジロジロ見ている気配がするなあ。あ、白いシャツに赤い斑点が。それはそうだろうなあ、ケガしていないわけないし。でもたいしたことじゃないでしょう。そして誰も声をかけるタイミングもなく、ささっと僕は電車を降りました。
 職場のビルの管理室にカギをもらおうと行くと、管理の人が青ざめたように言ったのです。「ああ、どうしたんですか? 血だらけですよ!」頭を触るとベットリと血のりが。「あ……」。ということで、そのあとはご想像にお任せします。まあ、無事だからこそ今川柳が書けるのです。

※投稿先 中野 早苗 Eメール:sanae403@y3.dion.ne.jp

★お役立ち情報(bV)
柏市 小川 博康 
【チーム柏主催のバリアフリー映画上映会について】
 柏を中心に活動している「チーム柏」が行っているバリアフリーの映画上映会をご紹介したいと思います。「チーム柏」は、JRPSの会員でこの間までJRPSちばの役員もされていた今野氏が中心に活動していますが、視覚障害者のためだけでなく、すべての障害者を対象として活動しています。活動範囲は広いのですが、今回は私もちょくちょく利用させていただいているバリアフリー上映会のご紹介です。
 JRPSちばのメーリングリストに登録されている方々には、毎回今野氏から直接案内が送られているのでご存じと思いますが、実際に利用させていただいている私から感想も含めて紹介させていただきます。最近は月に2〜3回企画されていますが、私は面白そうな映画の案内があると家内と一緒に出かけます。これまで5〜6回は行きました。具体的には、フランス映画の「エディットピアフ物語」、ドイツ映画の「5%の奇跡」、「空海」、日本映画では「光」、「関ヶ原」、最近では「妻よ薔薇のように」、「家族はつらいよ」などです。音声ガイド付きなので、視覚障害者でも十分楽しむことができます。
 バリアフリー活弁士として著名な壇鼓太郎(だん こたろう)氏の、生ガイドが付くこともあって、映画だけでなく生ガイドを聞く楽しみもあります。「エディットピアフ物語」は壇氏の生ガイド付きで非常に良かったです。フランスの有名なシャンソン歌手の生涯を描いた作品ですが、映画の中で時代が遡ったり後戻りしたりします。フランス映画で吹き替え無しの字幕スーパーですから、健常者でも字幕を読んでいると画面やストーリーの展開に集中できずついて行くのは難しいと思います。その点、壇氏のガイドは台詞だけでなく、俳優の動きや物語の経緯なども説明してくれるのです。健常者の家内も、音声ガイドを借りてとても良かったと言っていました。紹介される映画も「家族はつらいよ」とか「万引き家族」などロードショー作品もあれば「光」や「5%の奇跡」といった視覚障害者を描いた作品など身につまされるような映画もありました。
 現在は、JR柏駅西口の「キネマ旬報」と、つくばエクスプレス柏の葉キャンパス駅に隣接するららぽーと柏の葉内にある「ムービックス柏の葉」が会場になっているので、東葛地区以外にお住まいの方にとっては、でかけて行くのがちょっと大変なのですが、機会を見つけてでかけてみてはどうでしょうか。料金は音声ガイド付きでも通常料金より安い「シニア割引料金」程度です。ご興味のある方は、以下を参照してみてください。
≪ちばチャレンジド・ネット「チーム柏」 ≫
代表者 今野 正隆(こんの まさたか)
問合せ 携帯 070−4346−8338
    HP http://bfcctmk.biog.fc2.com

※このコーナーでは、カテゴリーやジャンルに関係なく、視覚障害者に役立つ情報を掲載しますので、多くの方からの投稿をお待ちしています。(匿名でも可)
◎投稿先 江澤 正広 Eメール:masa-ezawa@carrot.ocn.ne.jp

★こころの豆知識
船橋市 垣田 悦子
 皆さま、お元気ですか? 今年は梅雨が明けるのが早く、その分猛暑日も早く訪れ、身体が暑さについていかないまま夏本番に突入したようです。かくいう私も軽い熱中症気味となり、何だか身体の元気スイッチがオンにならない日がたまにあります。
 でも、そんな時は、目にも良く夏バテ防止にもなる料理を食べ、パワーアップするように心掛けています。今回は、そんな優れものの1品を紹介します。

 <ズッキーニとサーモンのカルパッチョ> 4人分
(材料)
スモークサーモン・・・・・・・100g
ズッキーニ・・・・・・・・・・1本
塩・・・・・・・・・・・・・・少々
黒こしょう・・・・・・・・・・適量
オリーブオイル・・・・・・・・大さじ2
にんじん・・・・・・・・・・・20g
(作り方)
@ スモークサーモンは、2〜3等分に切る
A ズッキーニは、2〜3mm幅に輪切りにする
B 皿にスモークサーモン、ズッキーニを交互に並べ、その上に塩、黒こしょう、オリーブオイルをかける
C その上に、人参をすりおろす
D ラップをし、冷蔵庫で20〜30分なじませる
 とても簡単で、夏にはもってこいの1品です。スモークサーモンが手に入らなければ、生ハムでも美味しくいただけます。レモン汁を少しかけると、これまた爽やかです。色々な食材をトッピングして試してみてください!

(効能)
 今回は、ズッキーニに注目してみました。見た目はきゅうりと似ていますが、実はかぼちゃの一種です。加熱すると舌触りも良く、くせがないのでさまざまな料理にあいます。今回のように生(なま)でも使えるので手軽ですし、今や日本でも定番の野菜となりました。皮にハリがあり、質感がなめらかなものを選ぶといいですよ。また、カリウムも多いので夏バテ防止にもってこいです! β-カロテンも豊富なので
・疲れ目の改善
・夜間の視力維持
・角膜を保護し、ドライアイの予防
などの効能があります。
 β-カロテンは、体内で必要に応じビタミンAに変換されます。ビタミンA欠乏症の代表といえば夜盲症といわれます。ぜひ、取り入れたい栄養素のひとつです。スモークサーモンには、アスタキサンチンが多く含まれるので
・結膜の血流改善
・ピント調節力を高める
・眼精疲労、老眼の改善
・運動中の筋肉疲労を改善し、持久力を高める
・免疫力を高め、夏バテ防止効果
などがあります。

(まとめ)
 熱中症も夏バテ同様、暑さによる脱水症状で体温のコントロールができなくなるのが、最大の原因です。猛暑の屋外や熱気がこもる部屋で、身体に熱が溜まり、具合が悪くなる急性の症状です。
 これに対し夏バテは、数日から数週間にかけて、じわじわ影響が表れ、不調が続く慢性の症状です。夏バテ特有の長引くだるさや食欲不振を放置すると、重篤な熱中症になりやすくなり、秋以降にも体調を壊すことにもなりかねないので要注意です。
 もし、外出先で気分が悪くなったら、急いで涼しい場所に移動し、冷たいタオルや、自動販売機の冷たいボトルなどで頸部、脇の下、太ももの付け根などを冷やし、体温を下げる手当を行ってください。
 また、水分補給も大切なので、こまめに水分を摂りましょう。体内の水分調整をするためには、ナトリウムとカリウムのバランスが大切なのでスポーツドリンクがおススメです。もし、家に無ければ、少量の塩を入れた水(0,1%濃度)でも代用できます。
 夏は食欲も低下し、さっぱりとしたそうめんなどを好んで食べがちですが、体力の低下を防ぐためにも、肉や魚、卵などのタンパク質もしっかり摂りましょう。梅干しは優れもので、食欲の無い時などにも食前に食べると食欲増進にもなります。外出前に食べると塩分補給ができ、熱中症対策にもなります。また、塩分補給のためにあめなどを買う際は、ナトリウムとカリウムの両方が入っているものを選ぶといいでしょう。塩昆布もおすすめですよ。
 これから、まだまだ暑い日がつつきますが、自分流の対策法で、暑い夏を乗り切ってください。ちなみに私は、食品を買った時に付いてくる保冷剤を活用し、ハンカチやスカーフにくるみ、身に付けクールダウンしています。お試しあれ!!
 また次回も、お楽しみに!

★編集後記
 昨年8月発行の会報109号より、編集委員の交代により1年間新メンバーで本号まで原稿の校正と編集をおこなってきましたが、思いのほか時間と手間がかかる作業で、前任者の苦労を痛感しています。
 また、掲載する内容も活動予定や報告に加え、新たな企画として「ロービジョン川柳」と「お役立ち情報」のコーナーを設けて、読者の満足度を高めようと工夫してきましたが、より一層の充実した内容とするためには、読者からのご意見や感想が必要と感じています。行事などに参加された折に、お聞かせいただければ今後の参考にさせていただきます。
 なお、会報は全文JRPSちばのホームページにアップしています。網膜色素変性症と診断され、JRPSの存在を知らずに、将来に不安を抱えて救いを求めている千葉県在住の患者さんにとっては、貴重なウェブサイトとなっています。その意義も含めて、会報はJRPSちばの活動の一旦を担う情報発信源であり、必要不可欠で最も重要な媒体であるとともに、JRPSちばの「顔」となっていますので、今後も引き続き編集委員は発行に尽力してまいります。
 最後に、発行にあたり、発送作業にご協力いただいているボランティアの皆さま、デイジー版を作成していただいている千葉中央朗読奉仕会かがりび様、点字版を作成していただいている点字あゆみの会千葉会場様に、心より感謝申し上げます。                         編集長 江澤 正広


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