あぁるぴぃJRPSちば会報162号


■ 投稿コーナー
★リレーエッセイ
「ハイジだよ」 ある盲導犬のつぶやき
   初めてお家に行く
 JRPSちばの皆さんこんにちは。ハイジだよ。今日はアイメイト協会を無事に卒業して、おばちゃんのお家に初めて行った時のことをお話しするね。
 4週間の人と犬の共同訓練が終わって、ある土曜日の朝、おばちゃんとハイジは卒業式に臨んだんだ。卒業式ではちょっと緊張したけど、少し恥ずかしいような誇らしいような感じがしたなあ。この日までの1年とちょっと、ハイジと仲間たちは厳しい訓練に耐えて今日の日を迎えることができたんだもの。今日からはハイジもお仕事をする盲導犬なんだよ。
卒業式の後、理事長やスタッフに見送られ駅に向かったんだ。駅に着くと、
 「さあ、それではここからは皆さん、アイメイトとともに家に帰ってください。お疲れさまでした。」
 指導員さんの言葉に、あの時のおばちゃんの顔といったら!みんなにも見せてあげたかったなあ。みるみる血の気が失せて引きつっていったんだよ。口を開けて何か言おうとしているんだけど、声にならないんだ。おばちゃんは家まで指導員さんが送ってくれると思っていたんだよ。それなのにハイジとおばちゃんだけで帰れって言われちゃったから、真っ青になっちゃったんだよ。
 「あの、あの・・・」何か言いたそうにしているおばちゃんに、
 「あなたは訓練を終えたのだから、どこでもアイメイトと歩けるはずです。無事に家に付いたら一応連絡ください。では、お元気で。」そう言い残して指導員さんはさっさと帰っちゃった。
 おばちゃんは駅の改札口の前に突っ立って茫然としているんだ。しばらくそのままだったけど、そのうち気を取り直しておもむろに電話を取り出してどこかにかけたんだ。
 「今駅なんだけど、これから一人で帰れって・・・、どうしよう。」どうも家にかけたらしい。家にはおじちゃんがいるんだ。訓練の間何回か面会に来たから、ハイジも顔は知っているんだけど。きっとおじちゃんがここまで迎えに来てくれるんだろうと思っていたら、
 「いいよ迎えに来なくても。駅から家までの行き方はわかっているから、ハイジと一緒に歩いてみる。だってこれからはハイジと歩くんだから・・・。」まじ?おばちゃん本当に家まで誘導できるの?変なところで真面目というか、融通が利かないんだから。ハイジは半信半疑だったけど、とにかくおばちゃんの「改札、ゴー!」という指示で駅の中に入ったんだ。
おばちゃんの家の最寄り駅までは1時間ぐらいかかったけど、幸いに乗り換えはなかったんだ。さて駅に着いて「ハイジ、アップ!」とおばちゃんの指示が聞こえた。ハイジは勢いよく立ち上がろうとしたんだけど・・・、立てないんだ。あれ?あれ?どうなっちゃってるの?立ち上がろうとしてもがいたけど、なかなか立てないんだ。
 おばちゃんは焦って「ハイジ、何してんのよ!アップだって、降りるんだから!早く立ってよ!」そんなこと言われたって、うまく立ち上がれないんだよ。どうしちゃったんだ。慌てたおばちゃんはハーネスを引っ張り上げて、やっとどうにか立ち上がった。「ゴー、ドア」という指示に歩こうとしたけど、歩けない。前足が前に出ないんだ。どうしちゃったんだろう。
 おばちゃんは焦りに焦って「何やってんの!早く下りないとドアしまっちゃうじゃない!ほら、何よ、ゴーだってば!ゴー!」でもうまく歩けない。足が前に出ないんだ。パニック状態になったおばちゃんは、ハイジをずるずる引きずるようにして閉まりかけたドアをすり抜けてホームに降りた。
 「何よ、どうしたっていうの?」おばちゃんは涙目になりながらハーネスを触った。ハイジの左足がハーネスから抜けて、右足の方に入っちゃっていた。左右の足が結束バンドで束ねられたみたいになっちゃってたんだ。1時間も電車に乗っていたので、その間ハイジはもぞもぞ動いたんだ。その時は今よりだいぶスマートだったから、ハーネスがゆるかったんだ。それで左足が抜けちゃって、立ち上がろうとしたときに、右足の方に左足も入っちゃったみたい。驚いたよ、こんなことになるなんて。
 「全く何よ。一体どうなっちゃってんの、こんな始まりってあり?」おばちゃんはぶつぶつ言いながらハーネスを正しい位置に付けかえた。まだ駅から出てもいないのに、何だか先が思いやられるなあ。
悪い予感っていうのはだいたい当たるんだよね。駅の改札口を出て広場に出て間もなく、おばちゃんは自分がどこにいるかわからなくなっちゃった。
 「えっ、どこにいるの、私たち?後ろから改札の音がするから・・・、そして前から車の音がするから・・・、え?道路は右にあるはずじゃないの?」おばちゃんはパニックになっちゃった。「どうしよう・・・、どうしよう・・・」どうするのおばちゃん。ハイジはおばちゃんの家は知らないんだからね。
 その時「お帰り」と男の人の声がした。あ、何度か会ったおじちゃんだ。心配して駅まで迎えに来てくれたようだった。ハイジはほっとしたよ。おばちゃんだけじゃ3時間かかったってお家には着けなかったよ。とにかくおじちゃんの助けを借りて、何とかお家に付いたんだ。
 「フーッ、やっと着いたね、ハイジ。今日からここがハイジのお家だよ。」本当に長い道のりだったよ。とにかくここがハイジのお家なんだね。そしておばちゃんとハイジの新しい生活が始まるんだね。前途多難そうだけど・・・。


★みんなの広場
私の一日
鎌田 正幸
 私は鍼灸マッサージ業に携わっていまして、現在ヘルスキーパー(企業内マッサージ師)として従事しています。先天的、後天的にかかわらず、視覚障害になってしまい鍼灸業のことが頭をよぎった方は少なくないと思います。知っているようで知らない漠然としたイメージのこの業界!悲喜交交な一日を紹介します。
 ヘルスキーパーは社員の福利厚生の一つに位置付けられ、社員はマッサージや鍼を割安に受けられるのですが、コロナ禍では開店休業状態でした。
 2023年コロナが明けてからみんな一斉に出社するようになり、朝一番で予約が満杯になっていることが頻繁にあります。予約がいっぱいになる事はありがたいのですが、ここで要注意なのが、2大ヘビーユーザーの存在です。気合を入れないと、体力的にも精神的にも削られる、2つの勢力がありまして、一つ目は「超強刺激愛好家」です。この方々は根っからのマッサージ愛好家で、少しでも力を抜くと一瞬でバレてしまいます。この方々が4人くらい連続した時は、リポビタンDが必須になります。
 2つ目の勢力は、鍼しか考えられない「鍼刺激愛好家」です。この方々は鍼の刺激をこよなく愛していて、全身鍼山にしてほしいと言い出しかねない方もいます。鍼は事故のリスクがあるため精神的に削られますので、この方々が連続した場合も気合が必要です。
 このようにひとすじ縄ではいかない一日を乗り切った後の晩酌は最高です。最高の一杯を求めて、また今日もがんばります。


発行人:特定非営利活動法人障害者団体定期刊行物協会
編集人:公益社団法人日本網膜色素変性症協会
    〒102−0072
    東京都千代田区飯田橋2−4−10 加島ビル3階 本部事務局内
問合せ:千葉県網膜色素変性症協会事務局(JRPSちば)
    会長 大野 真知子
    携帯:090−7014−2241
URL:http://www.jrps.org/chiba/local/index.html
定価 200円


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