第二回


    第二回:「遺伝の心配について」

九州大学病院眼科 宮崎 勝徳


 今回は遺伝に関することをお話します。

 網膜色素変性の方が心配されることの一つに「子供や孫が同じ病気になるのでは?」ということがあります。
 すでにお子さんがいらっしゃる方では発病の可能性が心配されますし、また今後お子さんを作る予定のある若い方では、子供をつくってもいいものかと切実な相談を受けることがあります。

 網膜色素変性は先天的な遺伝子のキズが原因で発病するので、そのキズが子孫に受け継がれる可能性があります。
 そして、キズが受け継がれても病気にならない「保因者」の場合もあれば、病気を発症してしまう場合もあります。
 これは前回お話したように、その原因となる遺伝子が数多くあり、遺伝子の種類やそのキズの部位などにより遺伝形式も違ってくるのです。
 そして一人一人がどの遺伝子なのかが解ればいいのですが、現在の医学ではほとんどの方が判別できないのです。
 つまり子供への遺伝については、個人個人の家系から推測するしかないのが現状です。

 推測するキーワードとして、@家族、親類に同じ病気の方がいるか、A血族結婚があるか、B発病者に男女の差があるか、などが挙げられます。

 以下はあくまで可能性で、本来は詳細に調べる必要がありますが、

 @ 発病者のご両親が血族結婚 → 劣性遺伝の可能性が高い。
 A 実の親子で発病している  → 優性遺伝の可能性が高い。
 B 発病が男性のみに限られる → 伴性劣性遺伝が疑われる。
 C 血族結婚もなく、家系に誰も発病者がいない → 孤発型と言われ、遺伝形式は不明。

と、ある程度の推測ができます。

 では、それぞれについて説明します。

 1. 劣性遺伝(全体の約20〜25%)
 人の遺伝子の情報は必ず1対(2つ)存在し、1つは父親から、もう1つは母親から受け継ぎます。
 劣性遺伝とは、その1つにキズがあるだけでは発病せず(保因者)、2つともにキズがあるときに初めて発病する遺伝形式です。
 数多くある遺伝子の中で、同じ遺伝子のキズが2つそろうことはめったにありませんが、祖先を共有する血族間の結婚(いとこ婚など)の場合にはその可能性が高まることが知られています。
 実際に劣性遺伝の場合、発病者のお子さんにその遺伝子のキズが必ず1つ受け継がれますが、発病者の相手(夫または妻)にその遺伝子のキズがなければ、お子さんが発病する可能性は理論上ありません。
 つまり多くの場合、お子さんは病気を発症しない保因者となります。

 2. 優性遺伝(約15%)
 1対の遺伝子のうち、1つに異常があれば発病する遺伝形式です。
 この場合相手を問わず、発病者のお子さんは理論上2分の1(50%)の確率で発病します。
 基本的に発病者の両親のどちらかがこの病気ですが、両親が発病していなくても突然生じることもあります。

 3. 伴性劣性遺伝(約1〜2%)
 原因遺伝子が性染色体という特別な場所にある場合に、この形式となります。
 特徴は、圧倒的に男性に多いことと、隔世(世代を飛び越えて)遺伝することです。
 発病者の子供がこの病気になる可能性は理論上なく、娘のみにその遺伝子が受け継がれ保因者となります。
 女性保因者の息子は50%の確率で発病し、娘の50%が保因者となるのです。

 4. 孤発型(50%以上)
 家系に同じ病気の人が確認できず、その遺伝形式が推測できない場合を孤発型といい、近年の核家族化などの社会環境の変化からその割合は増加しています。
 子供への遺伝は全く予想がつきませんが、一般的に孤発型の子供に発症する確率は10%以下と考えられています。

 他にも二遺伝子性遺伝など難しい遺伝形式がありますが、今回は省略します。
 このように遺伝形式も様々で、そのどれに該当するかは正確には不明です。
 半数以上の方は家系に同じ病気の方がいないので、血族結婚でない限りその子供が発病する確率は低いと考えます。
 家系に発病者がいる場合や両親が血族結婚の場合、ある程度推測することができるかもしれません、是非私達を含めた眼科医に相談していただければと思います。

 次回は「網膜色素変性と白内障、およびその手術について」です。


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