第四回


    第四回:「網膜色素変性の合併症、白内障とその手術について」

九州大学病院眼科 宮崎 勝徳


 網膜色素変性の方には、他の眼の病気(合併症)が少し起こりやすいと一般的に言われています。白内障、黄斑浮腫、網膜前膜などです。
 一般的に網膜色素変性ではかなり進行しないと中心の見え方は悪くなってきませんが、 合併症がおこると網膜色素変性が進行してない段階でも見え方が悪くなってきます。
 「網膜色素変性だから見えにくくなっても仕方がない、進行したのだろう」
と思いこんで、眼科に来られない方も大勢いらっしゃいます。
 白内障でしたら最近は非常に安全に手術ができますし、その他の病気も早期であれば手術などによって視力を維持、または少し良くすることができる可能性があります。合併症があるかないかはご自分では判断できませんので、網膜色素変性の方は定期的な眼科受診による早期発見がとても大切です。

 では合併症について説明します。

 @ 白内障
 ご存じの方も多いと思いますが、これは眼の中の「水晶体(レンズ)」が白っぽく濁ってくる病気です。
 水晶体は外界から入ってきた光を通すとともに、眼の奥の網膜(フィルム)にその光を集める働きをします。本来透明な水晶体が白く濁ることで、スリガラス越しに物を見るように、見え方が徐々に悪くなってくるのです。
 もともと白内障は歳をとると必ず皆さんなるのですが、網膜色素変性の方では早く発症する場合があります。一度濁った水晶体は薬では透明に出来ません、そこで治療としては手術になります。濁った水晶体を取り除いて、光を集めるために新しい透明な人工のレンズを移植するという部品交換のような手術です。
 現在では局所麻酔で30分もかからない、安全性の高い手術です。
 ただし網膜色素変性の方の手術の場合、眼の構造上手術が少し難しい場合もあり、また新たに移植する眼内レンズをある特定の種類(着色レンズなど)にした方が良いと考えますので、是非医師に相談してみてください。

 皆さんからよく質問される内容の一つは、「白内障があると言われたのですが、いつ手術をしたらいいのでしょうか?」というものです。
 この答えは、皆さんそれぞれの眼を診察してみないと分からないのです。
 白内障の濁りがどの位なのか、そして網膜色素変性の進行がどの位なのか、そして皆さんがどの位日常生活に困っているのか、によって意見が違ってきます。
 網膜色素変性がかなり進行している場合には、期待したような視力がでないことがあ りますが、濁りを取ることによって視野が明るくなったり、少し鮮明に見えることがある程度期待できます。
 一般的に濁りが強い場合には手術を受けて頂いた方が見え方が良くなる可能性が高い と考えています。

 他に質問される内容としては、「白内障の手術をして見え方が良くなっても、しばらくしてまた見えなくなってくると聞いたのですが…」というものです。
 これに関しても診察してみないと分かりません。見え方を再度良くすることができる 場合と、できない場合があります。術後の合併症(黄斑浮腫、後嚢下白内障など)が原因であれば、それに応じた治療をすることで視力の回復が望めますが、網膜色素変性の病気自体が進行してきた場合には視力の回復が難しいです。
 だからと言って手術をしないとずっと見えないままですので、ご本人と相談して手術をするかどうかは決めています。
 おしなべて、白内障手術をお勧めした方の多くに手術後満足頂けていると思っています。

 A 黄斑浮腫、網膜前膜
 黄斑浮腫は、眼の奥にある「網膜」という神経の集まった膜がむくみを起こしてしまうものです。整然と神経が並んでいるからこそ見えるのですが、むくみを起こして長期間経過すると神経が傷んで見え方が徐々に悪くなってくることが多いのです。
 この合併症に対しては、お薬や手術がある程度効くとされていて、少なくとも悪化を防ぐことができるとされています。
 網膜前膜は、文字通り網膜の前に新しい膜ができて、その膜が見え方を邪魔するのです。  これに対しては手術が有効で、やはり少なくとも悪化を防ぐことができるとされています。

 繰り返しになりますが、いずれの合併症も徐々に進行するため、ご自分ではあまり気がつきません。
 是非定期的に眼科受診をされることをお勧めします。


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