「遺伝情報と網膜ゲノム医療」
連続オンラインセミナー開催要項
[詳報]

患者自らゲノムとゲノム医療について理解を深めるため、昨年に続き、連続オンラインセミナーを開催します。

【名称】JRPSオンラインセミナー2021〜遺伝情報と網膜ゲノム医療・患者からのアプローチ〜

【主催】公益社団法人 日本網膜色素変性症協会(JRPS

【共催】NPO法人 オール・アバウト・サイエンス・ジャパン(AASJ

【形式】オンラインセミナー:パソコン・スマホで全国どこからでも視聴できます。事前に参加用URLをお知らせします。

【対象】遺伝性網膜疾患患者・家族、研究者・医療従事者、一般市民の方

1回 テーマ:網膜ゲノム医療の近未来(その2

【日時】2021113日(水・祝)13時〜16

【プログラム】

13     開会挨拶 長澤 源一(JRPS理事長)

      趣旨説明 伊藤 節代(JRPS理事)

1310  講演1「網膜変性に対する遺伝子特異的治療の進化」

      西口 康二(名古屋大学医学部眼科学教授)

1350    講演2「これからの網膜色素変性への医療とケア」

      村上 晶(順天堂大学大学院医学研究科眼科学教授)

1430    質問・コメント 西川 伸一(AASJ代表理事)

1445    休憩

1455    講演者・患者パネリストによる質疑・討論

1555    閉会挨拶 森田 三郎(JRPS理事)

16        閉会

【講演者プロフィール】

西口 康二:
1997年 名古屋大学医学部卒。
2005年 同大学院医学系研究科修了。
2007年 同附属病院眼科助教。スイスローザンヌ大学(遺伝医学)、英国UCL(遺伝子治療学)を経て、
2014年 東北大学視覚先端医療学准教授。
202010月より現職。
2015JRPS研究助成受賞。

村上 晶:
1981
年 順天堂大学医学部卒。同眼科学助手。
1988
年 米国眼研究所研究員。
1989
年 マイアミ大学眼科研究員。
1992年 防衛医科大眼科講師。
2000年 順天堂大学医学部講師。
2003
年より現職。

2回 テーマ:ゲノム医療推進と遺伝子診断

【日時】20211113日(土)13時〜16

【プログラム】

13       開会挨拶 有松 靖温(JRPS理事)

135     講演1「遺伝子検査の前に考えてほしいこと」

吉田 晶子(神戸アイセンター病院/京都大学大学院医学研究科 ゲノム医療学講座特定助教)

1345    講演2「ゲノム医療と倫理的社会的法的課題」

武藤 香織(東京大学医科学研究所公共政策研究分野教授)

1425    質問・コメント 西川 伸一

1440    休憩

1450    講演者・患者パネリストによる質疑・討論

1555    閉会挨拶 伊藤 節代 

16        閉会

【講演者プロフィール】

吉田 晶子:
2008年 京都大学大学院遺伝カウンセラーコース卒、
2016年より理化学研究所網膜再生医療研究開発プロジェクト勤務。
201712月からは神戸アイセンター病院も兼務。
2021
4月より、京都大学大学院ゲノム医療学講座にて学生の指導にも携わりながら、神戸アイセンター病院での勤務を継続。

武藤 香織:
1993
年 慶應義塾大学文学部卒。
1995年 同大学院社会学研究科修了。
1998年 東京大学大学院医学系研究科博士課程単位取得満期退学。米国ブラウン大学研究員、信州大学医学部講師などを経て、
2007年 東京大学医科学研究所准教授。
2013年より現職。

参加申込み方法

下記事項を記載し、メールにてJRPS本部事務局までお申込みください。
受付期間は20211031日(日)までです。

@氏名(フリガナ)
Aメールアドレス
B属性(1.患者、2.家族、3.研究者/医療従事者、4.その他)
CJRPS会員・非会員の別
D事前質問(任意)

※事前質問を受付けますが、回答できない場合もありますのでご了承ください。

※いただいたメールアドレスは本セミナーに関する連絡以外には使用しません。

【申込み先】JRPS本部事務局 Eメール:info@jrps.org

※メールのタイトル欄に「オンラインセミナー申込み」とご記載ください。

問合せ:Eメールまたは電話(03-5753-5156

※本セミナーの動画記録をJRPSホームページ会員専用ページに3ヵ月間(2022213日まで)掲載します。また報告書(墨字・音声デイジー)をJRPS会員希望者に頒布予定です。


講演要旨

■「網膜変性に対する遺伝子特異的治療の進化」 西口 康二(名古屋大学)

重症な小児発症の網膜色素変性類縁疾患であるレーバー先天盲を対象とした、アデノ随伴ウィルスを用いた初めての網膜遺伝子治療が2008年に報告されてから10年以上が過ぎた。この報告は、安全性の高いウィルスを用いて欠損遺伝子に対して正常な遺伝子を網膜に導入することで、それまでまったく治療法がなかった網膜ジストロフィにおいて、治療により光感度が改善し暗所での移動が向上することを示すものだった。

これをきっかけに、世界中で遺伝子治療の開発競争が始まり、今では網膜色素変性を含めてさまざまな網膜疾患に対して数多くの臨床試験が行われつつある。しかし、同治療に関する臨床データが蓄積されるにつれ、次第に無視できない課題も明らかになってきた。

本講演では、最初に遺伝子治療とは何か? という基本的なことを、歴史を振り返りながら解説する。次いで、さまざまな網膜ジストロフィに対して行われている遺伝子治療臨床試験の最新の結果をレビューし、同治療の今後の展望と現時点で何を考えるべきかについて考察する。

■「これからの網膜色素変性への医療とケア」 村上 晶(順天堂大学)

眼にかかわる遺伝子の働きと遺伝に関わる研究の進展は目覚ましく、網膜色素変性診療のなかでも遺伝学の重要性が増している。病気と関連する遺伝子の変化の同定と病気のしくみの理解が得られ、遺伝子を調べる検査(遺伝学的検査)は、患者さんへの適確な診断の助けになり、家族のケアや遺伝カウセリングのための情報を提供しうるものとなりつつある。今後、未解決例の割合を減らすために、より多くの患者さんの解析をするとともに、異なる方法を応用する試みが続けられている。細胞リプログラミング技術の進歩は、患者さんから提供された皮膚や血液などの細胞から人工多能性幹細胞(iPSC)を作って、網膜に近い性質をもった細胞を得ることが可能になった。

このような細胞を使った再生治療研究や、研究室の培養皿のなかで病気モデルを作り新たな治療薬の探索をするような研究も進められ、その道筋もいくつかのものに収斂しそうである。一方、急速な変化が起こりそうなこれからの社会での患者さんの健康管理と実生活における問題解決の仕組みづくりにはまだ明確な道筋が見えていないように思われる。患者さんとともに医療者や研究者も現存する難病対策と社会保障制度の仕組みを理解して研究成果をどう社会に実装していくか知恵を出し合うことが大切だと思う。

■「遺伝子検査の前に考えてほしいこと」 吉田 晶子(神戸アイセンター病院/京都大学)

最近、JRPS会員の皆さまの間でも、遺伝子検査について話題になることが多いのではないかと思います。当院でも、知り合いから遺伝子検査について聞き、ご興味をもって来院される方がおられます。神戸アイセンターでは、遺伝子検査をご希望の患者さんには、検査前に遺伝カウンセリングをご案内しています。なぜ、遺伝子検査を受けたいと思っているのにそのような場が用意されているのか、疑問に思う方も少なくないと思います。網膜色素変性の遺伝子検査において、原因の遺伝子が判明した場合、原因が突き止められると同時に遺伝のタイプも明らかとなります。遺伝カウンセリングで話題になることの一つは、患者さんの原因遺伝子が判明した時に、血縁者の誰に影響があるのかについてです。もしかしたら誰にも影響がないかもしれませんし、思いもよらないご親戚が話題にあがるかもしれません。ご自身としては、とくに心配がないと思っても、専門的な視点から検討し、患者さんのお考えをうかがいながら、遺伝子検査でどこまでのことがわかるのか、すり合わせていく話し合いが非常に大切です。この話し合いが行われなければ、予想していたものと違うという結末になる可能性もあるのです。遺伝子の情報と新しい研究や治療との関連性も検討事項となっていますが、だからこそ、遺伝子検査前の話し合いや検討が大切になってきます。当日は、遺伝カウンセリングの流れを追いながら、遺伝子検査の前に考えていただきたいことをお伝えしたいと思います。

※連続オンラインセミナーの詳細や講演要旨などは、JRPSのホームページでご覧いただくことが可能です。
https://jrps.org/blog/2020/09/19/