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「血管と神経保護、新たな神経変性疾患治療の可能性」

講師 京都大学医学部眼科学教室 大谷篤史先生

 皆さん、こんにちは。大谷といいます。今日お話する内容のほとんどはアメリカ滞在3年半の間にやっていた研究です。スクリプス研究所という研究所で、カルフォルニア、ロサンゼルスの南、メキシコの国境の町でサンディエゴという町にあります。有名なのはスクリプス海洋研究所です。鯨の生態とか海洋学では世界的に有名です。スクリプス研究所は非常にレベルの高い研究所なのですが、研究者の殆どは医者ではありません。実際に患者を診ることのある立場の人は少数派です。ですので、研究の方向性がやや違った方向へ行きがちです。僕はある程度の医者としての経験もありましたので、スクリプスの最新設備、情報、知識を集めて実際の治療に役立つような研究をしてきたつもりです。ですので、今日のお話、「血管と神経保護…」といろいろ難しそうですけれども、なるべく簡単にお話するつもりです。

 今日の話は「血管と神経」です。当たり前なんですが、神経と血管というのは体中に張り巡らされているものですよね。神経だと頭(脳)から始まりますし、血管だと心臓から全身に張り巡らされている構造です。今日の話の一つはその2つ何か関係があるかないかというものです。体の全ての栄養は血管から来てますから、神経やら何やら皮膚だって何だって血が行かないと機能が落ちて死んでしまうとか、病気になるとかということになわけです。2つめは網膜色素変性症で、神経変性疾患と血管が本当に関係があるのか無いのかという話。3つめは、骨髄細胞による血管再生という、これは非常に最近のトピックスでありまして、いろいろたぶん新聞とかニュースとか、幹細胞、再生医療という話を聞かれると思いますけど、僕がやっているのは血管を作ってみようじゃないかともしくは血管を元気にさせてみようじゃないかということです。皆さん持っている骨髄の細胞で、です。自分の細胞で自分の血管を治療できないかというようなことです。

<網膜血管位置の重要性>

 眼球というのは光を電気信号に換える組織です。入って来た光を網膜という神経の組織を使って電気に換えちゃうわけです。その電気に換えた信号が脳に行きます。だからそういう変換器みたいな組織です。ご存知の方多いと思いますが、簡単に見る仕組みを説明しますと、光は一番外側の角膜という黒目の表面と虹彩という大きくなったり小さくなったりする瞳という穴を通って眼球深部に達します。そして、水晶体、白内障でにごってしまう組織です、を通り、硝子体というゲル状の寒天みたいな組織を通過して、ようやく網膜、光を電気に換える神経細胞の膜に達するわけです。最後にその電気情報が脳に伝達されます。つまり今言った道程全てのどこかがやられると物が見えなくなる・見えにくくなるということが起こります。網膜がおかしくなる病気の一つに今日の話の網膜色素変性症があります。(スライド提示)これは普通の網膜の写真ですが、網膜は主に血管と神経細胞からなる組織です。血管がないと神経も動けませんので血管は必要なのですが、大事な点は血管の位置です。他の組織でも似たようなことはありますが、特に網膜では網膜血管走行のパターンは厳密に決められています。理由はおそらく網膜が光を正確に受けないと正確な情報が頭に伝わらないからです。血管でさえも光の通過と情報伝達の邪魔になるわけです。つまり、血管がうまくいい位置にないと網膜も機能しないし、よく見えないということになるわけです。

<網膜血管の重要性と神経疾患>

 網膜と言うのは、繰り返しますが、神経細胞だけではありません。血管が走っていてその血管にもいろんな細胞があります。平滑筋という筋肉の細胞もあるし、血管を作っているそのものの細胞もあるし、それを支える細胞もあるし、で、グリア細胞というのはこれは神経の1種なんですけど、網膜という神経の細胞を支える鎹やら土台やらそういう細胞だといわれています。で、他には血液からですね飛んできた炎症細胞、例えば白血球とか赤血球とかいうものは網膜の中をぐるぐる回っているわけですから、そういう細胞も網膜の中に含まれます。つまり網膜の機能を改善しようと、例えば網膜色素変性症の治療をしようというんであればですね、この、今言った細胞を全て面倒見てやらなければいかんということになるんではないかと思っています。特に血管というのはものすご網膜に豊富なんです。常にこうやって見ている間にでも目をしきりに使っているわけです。で、これは見える・見えないはもう全然関係ありません。とにかく光が入ってきて何らかの反応を常にしています。つまり寝ててもするし、何しててもするわけです。そうすると1日中酸素をものすご使っているわけです。そのため網膜にとって血管というのは本当に重要であるということなわけです。実はこれまで神経疾患への血管の関与はあまり考えられてきませんでした。神経の病気で神経細胞が死んだら神経細胞自体を治せばいいやというそういう考え方がほとんどだったわけです。血管の変化は2次的であると考えられてきました。僕はちょっとそうじゃないんじゃないかと思って、血管から神経を見てみようと仕事をしたわけです。

<網膜疾患>

 眼の病気というのは、角膜の病気・水晶体の病気・ブドウ膜、硝子体・網膜・視神経といろいろ病気があります。網膜疾患の原因としては機械的な原因があります。例えば網膜剥離という病気をご存知と思いますが、あれは、例えばボールが目にガーンとぶつかって網膜自体が破れてしまうようなわけですね、そうすると機械的に網膜の機能が失われるわけです。ふたつめは、遺伝子異常ですね。もう全ての身体の細胞というのは遺伝子を含んでいるわけで、なんらかの異常が起こればそこに異常が起こるわけです。網膜の遺伝子異常、網膜の細胞に遺伝子異常が起こって機能がおかしくなるという病気があります。さらに、習慣とか代謝性ですね、これは、例えば何か甘いものを食いすぎたとか、そういうことがあると、例えば糖尿病になって眼がおかしくなるとかそういうことが起こります。実際はこういった機械的、遺伝性、代謝性といった原因が混ざって網膜疾患が発症することかと思います。これら異常の実際の標的としては、神経系の細胞か血管系細胞であり、つまり神経が悪くなるか血管が悪くなるかで、結末としてはいずれにせよ神経細胞がおかしくなってしまうということになります。ちょっと難しい話ですね。

<網膜色素変性>

 網膜色素変性について簡単にまとめてみます。頻度としては3000人から8000人に1人といわれていて、視細胞の、先ほど言った網膜の光を換える細胞の桿体細胞(かんたいさいぼう)、暗いところで使う細胞の遺伝子に何らかの異常があって、それが元で明るいところを見るときに使う錐体細胞まで死んでしまうという病気です。後でまたお話することになりますが、何故そうなるか、つまり遺伝子的には暗いところを見る細胞だけが悪くなるはずなのに、明るいところを見る細胞までもだめになるその理由はまだわかっていません。もし、それを抑えられたとしたら遺伝子異常は直せなくても、つまり、暗いところでは見えにくくても、明るいところでは物が見えたままだよ、字は読めたままだよということが実現する可能性は十分あると思います。今日のお話はそれにも少し関連します。

網膜色素変性の症状としては暗いところの細胞がだめになりますから夜盲から始まることが多いです。暗いところを見る細胞というのは眼の周辺部に多いので、だんだん周りから見えなくなってくるような気がしてきます。明るいところを見る細胞もだめになりますから最終的には視力低下をきたしてしまいます。遺伝子異常の発症は特発性が1番多いです。遺伝子異常と言うと特別な疾患のような気がしますが、実はどんな病気でも遺伝子異常がかかわっているのではないかということがだんだん明らかになってきました。例えば糖尿病の網膜症にしても実は遺伝子異常が関与しているということが最近の話であって、ただ単に詳細がわかっていないだけだということになります。ですので、遺伝子異常は別に特別な病気ではないわけで、例えばもう他の疾患で応用されている新しい遺伝子の治療法が簡単に応用される可能性は十分あるんじゃないかと思っています。というのは、網膜色素変性症の場合は何のどこが悪いのか、解明されているものも多いですから、治療のターゲットがはっきりしているといえます。

<網膜色素変性の治療>

 今研究段階の新しい治療法を紹介します。まず遺伝子治療、遺伝子が悪いのでその遺伝子の機能を補うというものです。遺伝子は蛋白質の暗号ですので異常な蛋白質が異常な遺伝子からできてしまう、もしくはできなかったりするわけです。それで、異常な蛋白質もしくはできなかった蛋白質によって機能が損なわれるということになりますから、異常な遺伝子をちゃんとしたものに入れ替えるもしくは補ってあげてその蛋白質を治してあげるということが遺伝子治療の目的です。

 次に人工網膜ってやつです。これは人工内耳、補聴器とはものは違うんですけど考え方は同じで、結局網膜機能は光を受けて電気に換えれば良いわけですから、実はもうテクノロジー的には可能で、後は精度の問題です。本当に小さいものまで分別できるか、色も分別できるか、そういう精度を上げていく作業が今後の課題の一つかと思います。ロサンゼルスのUCLAの先生が網膜色素変性症の患者さんに人工網膜を埋めて機能を測っているのを見ました。患者さんは全く見えていなかったのですけれども、移植後は箱の形が言えるようになっていました。現在人工網膜というのは大まかな形・影があるかないかぐらいが分かるようにはなっているみたいです。この人工網膜というのはテクノロジーの進化と共に急激に進んでくる可能性はあるかなとは思います。どこまでいくかわからないですけども、特にもう本当に見えなくなってきてしまった方なんかにはすごい良い治療になるんじゃないかと僕は思います。

 もう1つ最近の話題としては神経細胞移植、網膜神経再生の話です。細胞がおかしくなるのでそれを幹細胞という細胞を使って再生させてあげようという話です。これは日本では京都大学の高橋先生が精力的にやっているわけですが、そう簡単ではない状況です。実際の臨床応用にはまだ時間がかかります。 

  (スライド提示)網膜色素変性症の視細胞です。左のほうは普通の網膜で、右のほうは網膜色素変性症になった方の網膜。視細胞層という細胞層が写っているんですが、網膜色素変性では非常に薄くなっている。本来なら何十列とある細胞層が、1列2列だけになってしまう。ほとんどの視細胞が死んでしまうということです。興味深い点は繰り返しになりますが遺伝子的には暗いところを見る細胞だけが悪くなる、だけど明るいところで働く細胞までやられるということですで、もう1つは同じたんぱく質の異常、もしくは同じ遺伝子の異常であっても患者さんによって全然進行の度合いが違うと言う点です。これは何故か?と、同じ遺伝子が異常だったら同じことが起こるんじゃないかということになるんですけど、そうはならない。また、進行も網膜っていうのは全部神経細胞で同じ細胞があるはずなのに、網膜の中心部と最周辺部は変性が始まるのが遅いわけですね。中間部からドーナッツ状に悪くなることが多いです。それも何故かわからないわけです。同じ細胞で同じ異常があるから本当は同時に始まるであろうというのが普通なんですが、そうではない。つまり症状に非常に幅がある、ということです。おそらく網膜色素変性症の進行というのは実は遺伝子異常だけではなくて何か、生活上の何らかのこともしくは他の要因ですね、例えば僕なんかは血流が悪いからとか、そういうことを言いたいんですけれども、そういう修飾を受ける可能性があるわけです。ですので、そういうところに実は近い将来治療の余地が生まれてくるんではないかということになるかと考えています。

<網膜色素変性と血管>

 血管と神経というのは身体の中で全身を被う紐状の組織です。ほとんど全ての組織に必要であって走行と分布は互いに影響し合うという話があります。皮膚の神経と血管が生まれてから育つまでに一緒に伸びていくんだという、神経の1つであるグリア細胞という細胞に網膜血管は引っ張られていく、といったことが証明され、血管と神経の解剖学的な共存関係がわかってきました。

 同様のことは実際の疾患でもわかります。網膜色素変性症は神経細胞だけやられているわけではありません。患者さんの眼を診ると血管も通常に比べて細くなっています。普通の人よりガチガチっとした感じになります。それと脈絡膜といって網膜のさらに後ろにある血管がものすごく多い組織があるんですけれど、そこの血管も萎縮つまり無くなってしまいます。また、機能的にも網膜色素変性症の人の血管というのは非常に漏れやすい、脆いということです。血流の速さ・量を調べてみますと血流は低下しています。普通の速度・量に比べると網膜色素変性症の患者さんの血流はかなり低下していると、それと血管の脱落もあると。つまり、網膜色素変性症では網膜血管も異常であるわけです。これまでは神経細胞が死ぬから2次的に血管がだめになっているんじゃないかと考えられてきました。

 僕はそれとは違って、血管の異常が更に病態悪化を加速させているのではないかと考えたわけです。(スライド提示)これは網膜血管の写真なんですが、網膜色素変性症の方はもう血管が無くなってしまいます。そこでまず血管を増やしてみたらどうなるであろうか、と考えたわけです。血管を増やすにもいろいろやり方がありますが、網膜血管となると簡単ではありません。先ほどもお話しましたが眼、特に網膜の構造は非常に精密です。光を正確に受け取るために神経細胞は勿論、血管も位置が決められており、少しでも網膜の構造が乱れると光は入ったけれどもきっちり見えない、ゆがむということになる可能性があります。ですので、血管もただ増やせばよいというわけではありません。

 現在血管を作るもしくは増やす方法はいくつかあります。最も研究されているのは増殖因子といわれる血管をやす薬みたいな物質で、それを入れると血管は増えるんですが、出来る血管は残念ながら網膜機能にはあまりよくありません。糖尿病網膜症と同じような状態になることが知られています。もう一つ最近良く研究されている方法に幹細胞を使う方法があります。僕らはその中でも骨髄の細胞を使って血管を生やしてやろうということにしたわけです。幹細胞というのは幼弱、つまり若い細胞です。大人になった細胞つまり成熟した細胞というのはもう運命が決まっていますから、その運命からもう逃げないわけです。でも、若い細胞というのはある程度周りの環境にちゃんと適応してうまくやってくれるわけです。環境に合わせて姿かたちを変える能力が備わっていることがわかってきました。そういった幹細胞というものは実は皆さんの骨髄の中にもあります。その骨髄幹細胞、特にその中で血管になる運命をある程度、もうすでに持っている細胞を使って血管を作ろうというわけです。方法は骨髄から細胞を採ってきます。骨髄には多くの種類の細胞がありますが、その中から最適の細胞を採ってきて、それを眼の中に直接注射してしまいます。そうしますと (スライド提示)入れた細胞は形を変えて、初めは網膜表面で突起を伸ばし星状の細胞になるんですが、それがだんだん、血管みたいな網目状の構造を作りだします。そしてしばらくすると網膜血管になってしまいます。非常に大事な点は細胞自身が正常な網膜での自分の位置を知っている事です。網膜の血管が存在すべき所に自ら動き、必要なあるべき網膜血管を作るということがわかったのです。簡単に言うと、直接眼の中に骨髄細胞を注射してやると、正常な網膜血管を作れる事が分かりました。

 さて、網膜色素変性症とはどう関係あるのだろうかってことです。我々は網膜色素変性症のマウスの骨髄細胞を採ってきて、右眼にはその他の骨髄細胞(コントロール細胞)、左眼には血管になる骨髄幹細胞を網膜色素変性のマウスに硝子体注射してみました。2ヵ月後、コントロール細胞を入れた右眼は普通の網膜色素変性症のマウスの眼と同様で血管ももうほとんど消えています。ところが、骨髄幹細胞を入れたほうの左眼は血管がびっしりとできていました。血管が変性しなかったわけです。使用した骨髄幹細胞自体は神経になるわけではないので、骨髄細胞投与により血管だけが増えるだけであろうと予想していたわけですが、組織を見ますと、骨髄細胞投与で血管が多い眼というのは、網膜が通常よりも有意に厚かったのです。網膜色素変性マウスの視細胞は普通だともう1列あるかないかの2ヵ月後が骨髄細胞投与眼は2列3列もしくは4列も視細胞が残るわけです。つまり、骨髄細胞を入れて血管を増やすと変性するはずの神経細胞が残ったということがわかりました。右眼も左眼も視細胞には当然同じ遺伝子異常があって同じ速度で無くなる筈なのに骨髄細胞入れとけば変性が有意に遅くなったのです。2ヵ月後は勿論、6ヶ月たってもまだ厚さに差が出る。これまでの報告ではだいたい効果をみてるのは1ヵ月後です。僕らの方法は6ヵ月後もしくは1年後でも差が出ているというような息の長い治療でもありました。長期間効果があった理由の1つは、細胞を眼の中に入れてその細胞が眼の中で生存しますから、効果がずっと持続すると考えられます。完璧ではないんですけれども、効果の持続という点ではこれまでの遺伝子治療と比べても大分効率が良いと考えています。

 細胞が増えただけでは治療としての意味はありません。実際にこの治療で機能的にも維持されているのか、マウスでERGという電気生理学的検査を行いました。するとやはり骨髄細胞治療した厚い網膜を持つマウス眼は機能的にも救われている事がわかりました。さらに、今日僕的には1番大事な話ですが、骨髄細胞を眼に入れて血管生やして、生き残った神経細胞というのはほとんどがですね、錐体細胞といって、明るいところでものを見る細胞だったわけです。つまり、今お話している治療は遺伝的問題を解決しているわけではなく、いわば栄養療法です。血管増やしているから栄養が増えるということも考えられますし、骨髄の細胞自体から何らかの栄養因子が出ていることも考えられますが、そういった栄養自体が、これまで理由が分からなかった暗いところを見る細胞の変性の後に起こる明るいところを見る細胞の変性を抑えたと考えられるのです。つまり、実際に治療で考えると、暗いところを見る細胞は遺伝子異常ですからこれはちょっと我慢して頂いて、でも明るいところでは物は見えるし字は読めますよと、真ん中はしっかり見えますよというような治療ができる可能性を秘めていることが分かりました。これまでの研究はどうしても桿体細胞、暗いところを見る細胞の遺伝子異常の病気ですから、それ自体をどう治すか殆どでした。錐体細胞が治ったという話はほとんど出ておらず、「錐体細胞救え」と学会の会長らしき人が叫いでいたほどです。「皆桿体細胞ばっかし考えんと、見るのは錐体の方が重要だから頑張ってくれ」ということを言っているのだと思います。偶然にも骨髄細胞を使って血管を増やす、強化すると錐体細胞が生き残るということが分かりました。

 まとめますと、骨髄の血管前駆細胞という血管になる幹細胞を入れますと、錐体細胞という明るいところを見る細胞の栄養になって、それを生き長らえさせる力があるんじゃないかということが分かりました。錐体細胞というのは視力、いわゆるものを見るのに直接関わる細胞ですから、いろんな遺伝子異常があり、同じ網膜色素変性症でも遺伝子異常っていうのはほとんど違います。今分かっているだけでも数十種あります。その遺伝子異常に関わり無く、細胞を末永く救える治療になる可能性があると考えています。これは自己細胞を使った治療です。本人の骨髄細胞っていうのは誰でも採れるわけです。眼の中に入れてあげれば効果が期待できるということではないかと考えて、詳しいメカニズムなり何なり、もっと効率いい方法なり何なりを今後考えていくつもりです。ただ、この治療法は基本的には進行を遅らせるということしかできない治療で、既に進行してしまった人の場合、再生によって神経細胞を生き返らすことができればそれが理想です。それでもやはり網膜再生は10年20年後の話を考えても完璧には難しいと思われますので、いかに神経細胞の変性を遅くするかという事も将来の治療の焦点であることは間違いないと思います。神経細胞が再生できる、もしくは人工網膜が本当に使えるほどに発展するまでのつなぎ役、もしくは僕らの研究によって新たに薬の開発、例えば錐体細胞何で救えるかという細かいことが分かれば新たな神経保護薬ができる、そういうことを期待して研究しています。


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