巻頭言

自分の病と向き合うこと 〜若年患者が抱える思い〜  ホームページ担当  定光 淳






 私は2016年にJRPS、JRPS広島に入会しました。
入会しようと思ったきっかけは、自分と同じ網膜色素変性症をかかえる皆さんが、どのように生活して、どのような思いをもっているかを聞きたかったからです。
もちろん自分のことも聞いてほしい、という思いもありました。
私は今、31歳で障害者手帳の等級は2級です。
中心の視力はまだまだ残っていますが、夜盲と視野狭窄はかなり進んできました。
障害者手帳を取得しようと思ったのは、今から5年ほど前、26歳の時でした。
この当時はこのまま病状が進んでいけば、自分がやりたいことをあきらめないといけない。
将来どうしたらいいのだろうかと悩みながらも、自分の将来のことについてきちんと考えることを先延ばしにしていました。
そんなあるとき、いつものように眼科に行き、検査が終わり、眼科の先生の診察を受けました。
当時はあまりちゃんと薬を服用せず、余らせていたので、「薬を飲むのも忘れるし、目薬を差す習慣もないから薬はいらないです。」と先生に言いました。
すると先生は突然、「あなたは自分の将来のことを考えていますか?」と聞いてきました。
突然聞かれたこともありますが、自分自身将来のことをちゃんと考えていなかったため、答えることができませんでした。
眼科の先生は、私が網膜色素変性症のことを甘く見ていると思ったのかもしれません。
正直、なんでそんなことを他人に言われないといけないのかと、腹も立ちました。
でも、これは私にとって、自分の抱えている網膜色素変性症という病が大変なことだと、改めて突き付けられた出来事だったのかもしれません。
この後に、将来のことを考えるには、今の自分がどういう状況なのかちゃんと知らないといけないと思い、障害者手帳を申請することに決めました。
家族は急に私が障害者手帳を申請すると言い出したことに困惑していたと思いますし、反対していました。
しかし私が押し切るかたちで手帳を取得しました。
家族が手帳の内容を見たときに、病状が思ったより進んでいると思ったようで、それから家族も少し網膜色素変性症をもつ私と向き合うようになってくれたと思います。
今後、医療技術の進歩によって、網膜色素変性症が治る将来があるのかもしれません。
それはもちろん待ち遠しいし、治ってくれるのなら嬉しい限りです。
しかし、今私にできることは、治る未来を待つだけではなくて、今どのように生きるのが幸福で、今何をすることが自分や周りにとって喜びとなっていくのかを考えながら生活することじゃないかと思います。
この人生でよかったなと思えるよう、これからも頑張っていこうと思います。

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