あぁるぴぃ広島 Vol.7


■図書の紹介■

1 『幸せに俺たちだって生きている』
   サブタイトル=網膜から落ちた鱗
                山本 進・著

  広島県支部ではQOL対策費(本部交付金)により、フロッピー付きを4部購入 いたしました。広島県内在住の方で貸し出し希望があれば、ご連絡ください。

 価格  本(墨字版)  1冊 1,200円
     フロッピー版(テキストファイル)  1枚 1,000円
      本1冊+フロッピー版1枚のセット  1,500円

 「この病気は不治の難病で、現在治療法はない。将来失明するかもしれない」。そ う宣告された著者が、失意のどん底で失明の恐怖と闘いながらも、軽妙な筆致で心の 懊悩や家族愛を赤裸々に綴る。そして、転機を越えて奈落から這い出した著者が、 「川柳」という表現手段を手にして、やさしい目で人間や世間を鋭く切った処女 作。

 この本は大きく3編から成っています。第1編の「ぶつかってから考えろ」では、 満50歳で退職した著者の大きい転機となった日本ライトハウスにおける日常生活訓 練の体験を綴り、第2編の「つれづれなるままに」では、「網膜色素変性症」が進行 する中で、「家族」「生活」「旅」「趣味」「自然」「政治・経済・社会」を、心に 移りゆくままにそこはかとなく綴っています。そして、第3編の「紙と鉛筆さえあれ ば」では、自作の川柳の一句ずつをテーマに、川柳的なものの見方で軽妙に人間を風 詠しています。

《目次》
 はじめに
 第一編  ぶつかってから考えろ
 第二編  つれづれなるままに
   第一章  家族
   第二章  生活
   第三章  旅
   第四章  趣味
   第五章  自然
   第六章  政治・経済・社会
 第三編  紙と鉛筆さえあれば
   第一章   「万能川柳」 (毎日新聞) より
   第二章   『番傘』 (番傘川柳本社) より
   第三章 その他より
     [「お〜いお茶新俳句大賞」 (伊藤園)]
     [「文芸選評 川柳」 (NHKラジオ)]
 おわりに
                         

《はじめに》
  「この病気は現代の医学では原因もまったくわからず、 治療法も確立していな い。 将来失明するかもしれません」。
 眼科医にサジを投げられた私は、 検査薬で瞳孔が開いたまま、 ぼんやりかすんで いた目の前が真っ暗になった。 その瞬間、 医師の姿があたかも白い衣をまとった僧 侶に見え、 生きていく望みを断つ“引導”を言いわたされた思いで身体が硬直して しまった。 「網膜色素変性症」 という進行性の網膜症で、 遺伝子の異常による病 気とされており、 全国で数万人の患者がいるという。 一九九六年一月に厚生省特定 疾患治療研究事業に指定された難病である。
 私は三〇代半ばごろ、 大手ガス会社のLNG工場の総務課に勤務していた。 ある 夜、 残業をして帰宅しようと事務所を出てすぐのところで深い側溝に落ちてしまっ た。 側溝の場所は知っていたが、 「暗反応」 が鈍く、 端が少し高くなっているコ ンクリートを越えて足を踏みはずしたのだ。 そういえば、 最近昼間でも右目がかす んでいるようで文字が読みづらいし、 毎日昼休みに、 事務所から岸壁までの約二・ 五qのジョギングを楽しんでいる時にも、 太陽がまぶしく、 舗装道路がギラギラす ると思っていた。
 もともと鳥目の徴候はあったが、 ビタミンAが不足しているのだろうと軽く考え ていた。 しかし、 ちょっとおかしいと、 思い切って大学の附属病院を受診した結 果、 冒頭の“死刑宣告”となったのである。  果たせるかな、 診断どおり徐々に視力が低下し、 視野が狭くなって、 自動車の 運転が困難になり、 文字もだんだん拡大率を大きくしなければ読めなくなってき た。 そこで、 まだ目の見えているうちに、 自分が生きてきた証として、 日々の平 凡な生活の中で起こったことや感じた喜怒哀楽を記録に残しておこうと考え、 折節 に日記風の随筆を書きとめてきた。 それらを項目別に整理してまとめたのが第二編 の 「つれづれなるままに」 である。
 また、 趣味の読書やジョギング、 金剛登山といったスポーツもままならなくなっ たが、 それに代わるものとして、 紙と鉛筆さえあればいつでもどこでも手軽にひね ることができる 「川柳」 という趣味を手に入れることができた。 川柳の入選句や 自選句を集めてまとめたのが第三編の 「紙と鉛筆さえあれば」 である。
 さらに、 満五〇歳の誕生日をもって退職し、 その後、 社会福祉法人日本ライト ハウス視覚障害者リハビリテーションセンターに入所して日常生活訓練を受けたが、 その訓練や入寮生活における体験を中心にまとめた体験記が第一編の 「ぶつかって から考えろ」 である。


 DNAの “いたずら” でアポトーシス (遺伝子によってプログラミングされた 細胞死) が起こり、 網膜から視細胞が徐々に脱落してものが見えなくなる一方、人 生のターニングポイントを乗り越えると、 網膜から鱗が落ちて今まで見えなかった ものが見えてくる。 人間や世間がはっきり見えてくる。
 この本は、 そんな中途視覚障害者が書いたものではあるが、 広く晴眼者にも読ん でいただき、 視覚障害者も晴眼者と同じように、 いろいろ悩みながらも平凡で幸せ な人生を生きていることを理解していただければこの上ない喜びである。


[著者略歴]
1948年(昭和23年) 大阪府に生まれる。
1967年(昭和42年) 大阪府立三国ケ丘高等学校卒業。
1971年(昭和46年) 国立大阪大学法学部卒業。
同年        大阪ガス株式会社入社。
1998年(平成10年) 同社退職 。
同年        日本ライトハウス視覚障害者リハビリテーションセンタ           ー入所。
1999年(平成11年) 同センター退所。
2000年(平成12年) 朝日放送株式会社入社。
2001年(平成13年) 同社退職。


 お問い合わせは、次のところへお願いいたします。
  山本 進(著者)
   Eメール:ZVP03444@nifty.com



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