盲人に接する人々のために
ちょっと知っておくと手を貸す側と貸してもらう側が
お互いスムーズに行動できるのではないでしょうか?
「盲人に接する人々のために」
(社会福祉法人
日本盲人職能開発センター)
より一部抜粋して掲載してあります。
★初めて会った時には★
見える人から軽く握手をしてほしいものです。
見えない人に初めて会った時には、握
手されると、相手がどの方向にいるか、また、背の高さがどのくらいであるかなどす
ぐわかり、見当違いの方向を向いて話しかけるような失敗が避けられるわけです。そ
れだけでなく親近感もわいてきます。
なお、その際に、「わたしは○○です」というように声をかけてほしいも
のです。
★椅子をすすめる場合は★
椅子がどこにあるかちょっと触れさせてほしいものです。
見えない人が椅子にかけようとすると、うしろから両肩をおさえるようにしたり、
腕をかかえるようにしてくれる人もありますがじつに困ります。見えなくても椅子に
は十分にかけられます。ただ、椅子の位置と方向がわかればよいわけです。したがっ
て、ちょっと手を椅子の背に触れさせてくれればよいのです。人の前であ
まりにオーバーなサービスをすることは、いたずらに障害者を無能に見せる結果とな
り、人格を傷つけることになります。人まえでのスマートな身体の動きは盲人の品位
を高めるためにも大切なことです。
なお、椅子にかけた場合、前にあるテーブルなどに手を触れさせてくれると、その
高さがわかってよいのです。
★お茶などをすすめる場合は★
手をそえて位置をおしえてほしいものです。
お茶やコーヒーなどが出された場合は、ちょっと手を添えさせてくれる
と安心して飲むことができます。どこにあるのか、などと思いながら手さぐりで探す
ようなみっともないことはしなくてすみます。「6時のところに置きますよ」などと
言ってお茶を出してくださる人もありますが、時計の文字盤の位置で知らせてくれる
のもよい方法の一つです。
最初はお茶を右の前に置いてくれたのに、お茶を入れかえた時、位置をかえて置か
れるのは困ることです。こうしたことはお茶に限らず位置を決めて置いてあるものは
つねに同じ位置に置くように配慮してほしいものです。
★席をはずす時には★
ひと声かけて席をはずしてほしいものです。
部屋の中で2、3人が話し合っている時に「○○さん」と声をかけると、「席をはず
していません」などと言われて不快な思
いをすることがしばしばあります。狭い部屋などでは人の動く気配は見えなくてもよ
くわかりますが、夢中で話をしているとつい気が付かず、いなくなった人を呼んでし
まうことになります。「ちょっと席をはずしますから」とひと声、声をかけてほしい
ものです。
こうしたことは部屋の中ばかりではありません。路上で話しかけられたので立ち止
まり、話し出すといつの間にかいなくなってしまい、ひとり言を言っているような滑
稽な状態になり、いやな思いをすることがあります。こんな時には「急ぎますから失
礼します」と言ってくれるとよいと思います。
★物の位置はどのようにして★
時計の文字盤の位置でおしえてほしいものです。
テーブルの上にいろいろな物が並べてある時など、どれがなんであるか見当がつか
ず困る場合がしばしばあります。こんな時、時計の文字盤の位置で知らせてもらえる
と判断しながら安心して手が出せるわけです。たとえば、3時のところにさしみがあ
ります。6時のところにしょうゆが、9時のところに酢のものが、そして、12時の
ところにフライが、というように説明してほしいものです。「そこにあります」など
という言葉は、そこがどこであるかわかりませんので、絶対に使われては困ります。
部屋の中や屋外の物を示す場合も同じことです。今立っているところを中心にし
て、前へ何歩とか、左へ何歩、あるいは右へ何歩というように知らせてください。
★食事の際は★
食事はみんなで楽しくしたいものです。頼みもしないのに、
食べ物をつぎつぎに
取ってくれるような親切は、見えない人にとって、かえって迷惑なことがあります。
時計の文字盤の方角であらかじめ食べ物の種類や位置をおしえてくれれば、自分で好
きな物を自由に食べられるわけです。 なお、器などにそっと手を触れさせてくれる
と、形や大きさなどもわかります。そのほか色や模様などを説明してもらえると、よ
りいっそう楽しい食事になるものです。
★危ない物を渡す場合は★
刃物は慎重に渡してほしいものです。
ナイフのような物を渡してくれる場合は安全な柄の部分をつかませてください。そ
して、反対の手に刃の背中の部分をおしえてください。そうすることによって、ナイ
フの向きや長さもわかり、けがをするようなことは避けられます。
また、熱いお湯の入った湯わかしなどを渡してくれる場合は、持つところがわかる
ようにしてくれると同時に、湯の出る口の位置をおしえてください。そうすれば、湯
わかしを受け取った時に、間違って足に熱い湯をこぼすようなことは避けられます。
★カードなどの利用は★
近年、日常生活の中では電話機や自動販売機などカードを利用することが多くなって
きています。したがって目の見えない人にとってはカードやお金を入れる位置や必要
なものを選ぶボタンの位置がわからず困ることがしばしばです。
見えない人が電話をかけようとして受話器をとると、カードを入れ、「何番です
か」などと言って親切にかけてくれる人もありますが、できることなら
カードを差し込むその位置を知らせてほしいものです。見えない人の多くは日常の生
活動作の訓練を受けたり、生活の中でなるべく自分のできることは自分自身でやるよ
うに努力していますので、頼まれない限りいきすぎたサービスはしないでほしいもの
です。
★お金などを渡す場合は★
お金などはわかりやすく渡してほしいものです。
金銭の受け渡しは、間違いがあると不愉快な感情が残ります。それに、だいじな信
頼感まで失ってしまうこともありますから特に気を付けてほしいものです。
見えない人が買い物などを頼むために、お金を出したときには、一般の店の店員が
するようにお金の額をはっきり言って受け取ってください。見えない人は自分の指を
物さしにしたり、折り方や入れるところで区別していますが、間違うこともないわけ
ではないからです。
また、あなたが見えない人にお金を渡す場合も「ここに置きますよ」などと言っ
て、机の上などに置かないで確かめられるようにゆっくり手に渡してほしいもので
す。
★手引きする時には★
見えない人の、歩く手引きをする場合は、必要以上の神経を使わずにいてほしいも
のです。手引きするという気持ちが強すぎると、とかく神経を使いすぎることになり
ます。
軽く一緒に歩くという気持ちでいてほしいものです。見えないといっても、足が悪く
て歩けないわけではありません。ただ足元やまわりの障害物が的確に捉えられないの
で歩くことに困難を感じているのです。腕などを抱きかかえるように手引きされると
身体が自由にならず困るものです。右の腕をかしてくれればよいので
す。見えない人は左の手をとおして相手の身体の動きがよくわかります。このように
して歩くと見えない人が少しうしろになって歩くことになりますから安全です。ま
た、身体の動きも自由で危険も避けられるわけです。
楽しく気軽に歩きたいものです。
★階段の上がり降りは★
建物の中はもちろん屋外の歩行において、階段の上がり降りは非常に多いもので
す。これは、手をかしてくれる人にとって特に神経を使うところです。見えない人が
つまずきのないように手引きしてもらうためには、左手で右腕を
軽くつかまらせてもらうのがもっともよい方法です。見えない人は左手をとおして相
手の足の動きまでもよくわかり安全です。
なお、階段の前に行った時、「上がります」とか、「降ります」とか、言葉をかけ
てくれるのも一つの方法です。
★バスの乗り降りは★
見えない人がバスを利用する場合に、もっとも困ることは、ワンマンカーなので、
どこ行きであるかがわからないことです。こんなとき、ちょっと行き先をおしえてほ
しいものです。
また、車の中で座席などはよく譲ってくれますが、ブザーの位置をおしえてくれる
人はきわめて少ないのです。ブザーの位置がわかれぱ、自分で押せますから安心して
乗っていられます。
なお、立っているときなど、つり皮とか柱などの位置もちょっとおしえてほしいも
のです。また、乗り降りの場合には、手をとって案内してくれるより、よりどころとなるものを知らせてください。
もちろん、料金を入れるところもお
しえていただきたいものです。
★エスカレーターの乗り降りは★
「見えないからエスカレーターは危ないですよ」などとよく言われますが、これは
安心して乗れる物の一つです。
それには、左手がベルトにかかるようにしてほしいものです。降り
るときには、ベルトの動きでのぼりきったかどうかがよくわかり、重心を前にして一
歩ふみ出すので安全です。
ベルトにつかまらずまん中に乗せられるくらい不安なことはありません。また、
しっかり腕を組まれたりするよりも、一人でベルトにつかまっている方が、身体が自
由になり危険も少ないわけです。手引きしてくれる人は、前に乗っているよりも、一
段下にいる方が望ましいと思います。
★タクシーなどに乗る場合は★
タクシーや乗用車などに乗るときには、停っている車がどの方向に向いているのか
が一番知りたいことです。それにはドアーにちょっと手を触れさせてください。ドア
−の開きぐあいで座席の方向がわかります。また、乗る時は、車の屋根
のところに手を触れさせてください。車の高さがわかり、頭にけがをするようなこと
は避けられます。
なお、車の中では杖は、たたむか、折りたためないものの場合には横などに置くの
が望ましいことです。両腕で杖をにぎり、身体の前についた姿勢でいると、車が急停
止した時、喉や顔などを傷つけることがしばしばありますので、目の見えない人はも
ちろん、手引きする人も杖の置く位置は注意してほしいもので
す。
★道などを聞かれた場合は★
目の見えない人の立場になって説明してほしいものです
ひとり歩きしている見えない人の多くは、オリエンテーション アンド モビリ
ティといって、自分のまわりの環境が聴覚、触覚、嗅覚などの利用によってわかるよ
うな感覚訓練を受けたり、また、より安全に歩くことのできるための歩行訓練を受け
て、行動範囲を広げています。
そして、道路などを歩くときには、つねにメンタルマップといって、頭の中に歩こ
うとするところの地図を描いています。
しかし、すべての道がわかるわけではありません。したがって、道や行く場所などを
聞く場合がしばしば起こります。こんな時、東西南北でおしえてくれることがありま
すが、非常に困ります。立っているところを基点として、「まっすぐに00メートル
くらい行き、パチンコ屋の角を左へ曲がり、何軒目です」などと言うように左右で説
明したり、音や臭いのある目標物があれば知らせてほしいものです。
★愛のひと声を(May I Help You?)★
目の見えない人が困っている時には声をかけてほしいものです
ひとり歩きをしている見えない人を見るとすぐ声をかけて手をかそうとする人がい
ますが、これはあまり有難いことではありません。しかし、ちょっと見て何かを探し
ているような様子とか、困ってだれかの手を借りたいなと思っているようなときに
は、黙って見ていないで、「だいじょうぶですか」と、ぜひ、ひと声かけてほしいも
のです。この ”愛のひと声”が明るい街づくりのもととなります。
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