会報誌ビッグスワン第57号巻頭言

「他人と過去」は変えられない、変えられるのは「自分と未来」

山陰網膜色素変性症協会(JRPS山陰)会長 矢野 健

「今年の夏は、記録的な猛暑」と毎年言っています。もはやこの猛暑は、災害と言っても差し支えないのでは、ないでしょうか?

私たちを苦しめた新型コロナウィルスも5類になりましたが、鳥取県でも島根県でも未だに集団感染(クラスター)が発生しているようです。いつになればこの感染から抜け出せるのか不明な状況ですが、旅行や食事会などは解禁になりました。自分の身は、自分で守るということですね。

さて、あなたは、他人と過去のことに悩み過ぎて、苦しくなっていませんか?

「あの人の性格、何とかならないのかしら」「私はなぜあのときに、あんなことを言ってしまったのだろう」。このように、人はとかく他人や過去のことばかりを考えて、くよくよ悩んでしまうものです。

そんな時に思い出すのは、「他人と過去は変えられない。変えられるのは自分と未来」という言葉です。

「相手に変わってほしい」といくら期待しても、相手がこちらの思い通りに変わってくれるとは限りません。なぜなら、「他人の気持ちは他人のもの」だからです。

過去も同様です。育った環境やたどってきた道、あらゆる失敗、こじれた関係など、「どうして、こうなってしまったのか」「なぜあのとき、こうしなかったのか」と、人はいつまでも悩んでしまうものです。でも、そうしたことをいくら考えても、過去の事実は変わりません。

まず、「自分」を変えるには、考え方のくせを変える事です。

うまくいかないのは、自分の「思いぐせ」や「考え方」に問題があるのかもしれません。

普段、無意識のうちに選択している考え方のパターンは何でしょう? たとえば、物事を「○か×か」と二極化して考えている。いっときの感情にとらわれ、「自分はいつも失敗する運命」などと決めつけている。このようなことが多くありませんか?

こうした非合理的な考え方を「認知のゆがみ」と呼びます。

具体的には、「ストレス思考10パターン」をチェック!」という記事で解説していますので、ご自分の考え方に近いものがあるかどうか、ぜひチェックしてみてください。

これらの認知のゆがみに気づいたときには、そのゆがみにそって物事を考えるのをやめることです。

そして、「こう考えて苦しくなっているけど、この考え方は本当に合理的なのかな?」というように捉え直してみることです。これをくり返していくのが「認知療法」です。

「テストに不合格になっただけで、なぜ『人生まで負けだ』と決めつけるのだろう?」「人生のルートはいくつもあるし、人生は何度でもやり直していいのでは?」というようにその都度、自分に問いかけていくことです。

そして、もう一つの未来を変えるには、「小さな変化」を積み重ねること。うまくいっていることを続ける、うまくいかなければ違うことをするです。

では「未来」の方は、どのように変えていけばいいのでしょう? 3つのルールに、未来を変えるヒントがあります。

【ルール1】今やっていることがうまくいっているなら、変えなくていい
【ルール2】一度やってうまくいったことは、繰り返していこう
【ルール3】うまくいっていないなら、違うことをやってみよう

とてもシンプルなルールです。目の前の小さな行動を変えれば、未来は変わります。一度やってうまくいったことは、次もその方法でやってみましょう。うまくいったことを何度も続けると、それが得意になります。得意なことができると、自信がついていきます。この繰り返しにより、自分がよりよく変化してきます。そして、今取り組んでいる方法で成果が出ないなら、他の方法を試してみましょう。うまくいかないのは、今の自分に合っていない方法だからなのかもしれません。自分に合うことに取り組んでいれば、楽しさややりがいを感じ、時間を忘れて没頭できたりします。そうしたものは自然に続けていきたくなるため、時間とともに上達し、得意になっていきます。

くり返しになりますが、「他人」と「過去」は変えられません。変えられるのは「自分」と「未来」です。あなた自身がよりよく変われば、周りの人もあなたに影響され、いつの間にかあなたが望むように変わっていくかもしれません。

そして、自分の未来がよりよいものになれば、過去に対する思い(くやしさ、後悔など)も変わっていきます。「嫌な思いもたくさんしたけど、すべて肥やしになっている」というように、自分の過去を肯定的に捉えられるようになるからです。

ぜひ、変えられない「他人」と「過去」に悩むより、「自分」と「未来」をどのように変えていくのかを考えてみましょう。きっと、今までより何倍もよい変化が現れると思います。

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