障害年金の家族加算制度について(配偶者加給年金、子の加算)

社会保険労務士 松原智治

社会保険労務士の松原智治 (まつばらともはる)です。2024年もどうぞよろしくお願いいたします。早速ですが今回は、障害年金の家族加算制度をテーマに取り上げます。

障害年金には、家族加算制度が2種類あります。「配偶者加給年金」と「子の加算」です。2級以上の障害年金を受給する方に扶養している(「生計を維持している」という意味)配偶者や子どもがいる場合、障害年金本体とは別に受け取ることができます。条件と金額は次のとおりです。

まず、対象となる「配偶者」とは、65歳未満で収入が850万円未満(または所得655万5千円未満)の方です。令和5年度加算額は、228,700円です。ただし、配偶者自身が障害年金を受給されている場合は、加算はありません。ご夫婦それぞれに障害年金の権利があるため、社会保障上は独立した個人として扱われるためです。

次に、対象となる「子」とは、18歳になった後の最初の3月31日までの子です。例外として、障害等級2級以上に該当する状態の子は、満20歳まで対象とされます。令和5年度加算額は、2人目の子までは一人につき228,700円、3人目以降は一人につき76,200円です。両親ふたりとも障害年金2級以上を受けておられる場合は、おふたりそれぞれに同額の子の加算が受けられます。

そして、受給できる種類は、障害厚生年金と障害基礎年金とで異なります。障害厚生年金を受けている方(初診日が厚生年金加入中だった方)は、配偶者加算も子の加算も、両方受けられます。一方、障害基礎年金のみ受けている方(初診日が国民年金加入中だった方)は子の加算のみです。家族加算に限らず、公的年金制度全般において厚生年金保険は国民年金より有利な扱いになっています。前述のとおり、「配偶者加算」は障害厚生年金にしかありません。この理由は何かと言いますと、厚生年金保険側に大きくふたつあるとされます。ひとつは、厚生年金保険制度は創設当初から「会社員の年上夫と専業主婦の年下妻」という単位が設計の基本となっていること、もうひとつは、勤務先が保険料を半額負担している点です。一方の国民年金は、夫婦であっても社会保障上は独立した個人単位と整理されたため配偶者加算は対象外、というものです。令和の現在は昭和よりも女性の就労範囲が拡がり、社会保障上の独立が進んでいるのは間違いありません。しかし、公的年金の家族加算制度について改正の情報はなく、当面このままと見込まれます。また、「家族」とは言えその事情は実に様々です。例えば、長年夫婦として地域に溶け込んで生活している男女が、実は、法律婚ではない内縁のケースや、学業のため遠方に生活拠点があり両親と住民票が別になっている小中高校生のお子さんがいるケースなど。現在の家族加算ルールでは、こういう事情があっても、生活実態に合わせて「生計維持」を認める手法が採用されています。前よりは、柔軟に給付されるよう運用しているようだ、とも言われます。事情に応じて提出する公的書類等をもとに審査が行われ、内縁の夫婦や住民票が異なるお子さんでも、家族加算の対象になりえます。弊社でも過去何件もお手続をし、認められています。念のため付け加えます。現在の制度では、障害年金を受ける権利を得た後に御結婚されたり、子の出生があった場合でも、その時点から届出により加算が受けられます。収入等の要件審査はありますが、漏れなくお手続をなさってください。

総じて、生活実態や保険料負担と釣り合う給付が行われないのであれば、端的には、損をしているということになってしまいます。ご自身の暮らしのことです。制度や仕組みをよくお確かめになっていただければと存じます。

以上、参考になれば幸いです。それではまた次回。どうぞ素敵な毎日を!

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