障害年金の初診日が認められず「却下」だった場合

松原智治

社会保険労務士の松原智治 (まつばらともはる)です。いつもありがとうございます。

さっそくですが、『障害年金の請求が却下された場合の対処』についてご説明いたします。具体的には、障害年金の請求が認められなかった理由が『初診日が認められなかった』ケースです。ふたつ方法があります。ひとつは、不服申立てをする方法。もうひとつは、再度請求する方法です。

はじめに、障害年金の初診日とはどんな日のことを指すか確認いたします。法律では"障害の原因となった傷病について初めて医師又は歯科医師の診療を受けた日"とされています。行政もこの言葉をそのままなぞって案内することがあります。でも、言葉だけでは正直わかりません。実務上は、発病メカニズム等を前提に、様々な解釈が存在します。したがって、同じ診断名でも人によって初診日が異なります。ただし、似通ったエピソードが初診日になることもまた現実です。眼の疾患の場合はどうかといえば、"著しい視力異常や視野狭窄等の具体的症状を自覚し、診断と治療を求めて自ら眼科医を受診した日"となるのが通例です。あるいは、本人に自覚はないが身近な人から眼科受診を促されて診察を受けた日や、眼鏡処方箋を求めて眼科を受診した際、(何らかの疾病が疑われる)との偶然の指摘を医師がした日も、初診日となるケースがあります。障害年金制度は、これらのエピソードの最も古い受診日を初診日として申告し、その初診日に加入していた制度から給付が行われます。そして、「この日が初診日です」と申告したものの"その申告が認められない場合"があるということです。対処は次のとおりです。

まず、"不服申立てをする方法"とは、審査のやり直しが2回受けられる手続のことです。裁判と似ています。審査機関が変わるため、判断が覆ることもあります。ただし、申し立てには期限があります。また審査資料は、もともと提出した書類のみです。よほどのことがない限り、新しい資料や説明は採用されません。つまり、もともと提出した書類の情報が不十分だった場合は、覆る可能性は低いということです。主張も、「私の言い分を認めてください。支払ってほしいです。」という"お願い"ではありません。「国の判断は、この部分で評価を誤っています。おかしいと思います。」という"具体的指摘"をするものです。

次にもうひとつの"再度請求する方法"とは、初診日証明のため、信憑性の高い証拠を検索して提示するものです。再度請求なので、請求書や診断書も再度揃える必要があります。期限はないので、準備時間は確保できます。そもそも初診日とは、本人の言い分だけでは認められません。いくらでも都合よく言えるからです。したがって通常、医療機関の証明書が必要です。それが取得できない事情があれば、当時の日付入り診察券や領収証、健康診断個人票、第三者証明等を添える必要があります。しかも、何を添えるべきなのかが、人それぞれ異なります。

そして、これらふたつの方法に共通するポイントがあります。それは何かというと、「たしかにあなたの申告には一理ありますね。」とか、「書類を参照する限り、いちおうあなたの言い分はたしかなことなのでしょう。」というレベルに審査側が納得する情報が必要だ、という点です。それが何なのかが人それぞれ異なるというのが、難しい部分でもあります。

昨今の手続改正により、「この日が初診日だ」とはっきり証明できない場合でも、前より柔軟な対応が受けられるようにはなりました。しかし、保険制度である以上、よくわからないものにお金が支払われることはありません。お手続の際には、初診日申告に入念な準備をなさってください。

以上、参考になれば幸いです。それではまた次回。どうぞ素敵な毎日を!

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