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●覆面座談会:補聴器について


司会: みなさん、こんにちは。この度はお忙しいところ集まっていただきまして有り難うございます。
一同: (皆、覆面をしながら)いえ、どういたしまして。
司会: 今回は、補聴器についていろいろ伺いたいと思います。ただメーカー名が公になるとそのメーカー様に迷惑がかかるかもしれないので、こうしてみなさんに覆面を被っていただき、メーカー名も伏せて頂けるようお願いします。
一同: わかりました。
司会: さて、補聴器について忌憚のない意見をどうぞ。
A氏: 皆さん、こんにちは!まずはアイヤ会ML誕生、おめでとうございます。私は4月から盲学校へ入学し、三療師を目指そうと思っています。
視力は未だ両眼ともに0.2あるのですが、視野5度以下で、聴力80デシベル以上です。昨年暮れに補聴器の補装具申請で、挿入型カナル式補聴器を装用しています。音質はO社製品が抜群に良さそうなのですが、以前からの慣れなどからB社製を選びました。
B氏: 私はW社製。過去、R社製ともう二つ国産メーカーを使っていましたが、使用感はいまいちでした。親戚が亡くなった時に親族で一人難聴だった私に未使用のW社製の補聴器が形見分けで届きました。BOX型のものでしたが、今までで一番、私の聞こえにあったもので気に入っています。W社製はフルデジタルもハーフデジタルもアナログもありますが、私は聞こえにムラのある人は調整のきくハーフかアナログがいいと思っています。フルデジはご存知の通り、コンピューターが管理していますから、その日の聞こえにあわせて調整することはできません。
C氏: 私も弱視難聴です。もともと難聴だけだったんですが、中学校時代からだんだん視野が狭くなり、今では視野10度以内です。現在、私も盲学校に通ってまして2年生です。授業や会議などの時はもっぱらFM補聴器を使用しています。
E氏: 私は、昔はR社製の耳掛け式を持っていましたが、今はS社が販売しているTっていう耳穴式でオーダーメイドのものを使っています。4〜5年ほど前に購入しました。両方で50万もしました。貧乏人には痛い出費でしたね。ホントに高いですよね、補聴器って。何とかなんないのかな!
司会: ところで国産のフルデジとW社製のフルデジでは聞こえが違いますか?
B氏: 確かに国産のフルデジとW社製のフルデジは聞き比べると違いがあります。でも、聞こえはそれぞれ違いますので。私はある先生が言われるように、「補聴器を買う時は少なくても1〜2週間。できれば1ヶ月以上、借りて決めるべきだ」と思います。W社製の契約店では1〜2週間のお試しができる店が多いようです。
E氏: インターネットのサイトなんかを見てみても、補聴器は試してから買うものとありますね。高いんだから当然ですね。でも、私は試して買ったことはないです。今度からは遠慮せずにお試ししようっと。
司会: なるほど、補聴器を購入する際には1〜2週間。できれば1ヶ月以上、借りるのがいいんですね。で、フルデジを装用したときのエピソードはありますか?
B氏: 店で簡単な調整をした耳穴式の補聴器をつけ、電車で繁華街に出かけたんです。電車の中でも同行した義母の声がはっきりと聞き取れるんです。国道沿いの大型ダンプの通る道でも会話は難なくできました。小鳥のさえずりも聞こえました。会話を優先しているようですがその他の音も聞こえるので、電話が鳴っても聞こえる。これって、当たり前のようなんですが、実は普通の補聴器とは違うんです。
その後、ランチタイムで混みだした繁華街のおそば屋さんに入りました。まわりのざわめきも会話として聞こえます。
司会: この普通の補聴器とは違うと言うところ、なかなかうまく口では言い表せませんよね。わかります。
B氏: そのうち、不思議な音に気がつきました。かすかに聞こえる 不思議な音……。「なんの音なんだろう?」と耳を澄まして気がつきました。なんと厨房の水の音なんです。
司会: ほう〜(笑)。
B氏: びっくりしましたよ(笑)。今まで家庭内で時々「水が出しっぱなしだよ」と主人や子供たちが教えてくれていたんですが、この音だったんですね。台所で自分が触ってる水の音は聞こえていても、そこから離れると聞こえなかったので、わからなかったんです。これにはとても驚くと同時に、健聴者はこんな音も自然と聞こえているんだ。と少々、耳障りな気分を味わっていました。
司会: 健聴者は色々な音の中で暮らしていると言うことですね。
B氏: そうです。でも、ここで肝心なのが、「耳障り」でこれをやめてしまうこと…。ご存知だと思いますが、私たちは五感……、つまり視覚・聴覚・触覚・嗅覚・味覚で情報を得ています。情報はそのまま脳へ刺激を与えて脳の働きを維持します。「会話だけ聞こえたらいい」と私たち難聴者は思いがちですが、やはりそれだけでは脳への刺激は足りません。老化を早めてしまうように思います。
司会: なるほど、ちなみにBさんはその補聴器を購入されたんですか?
B氏: 悲しいことにフルデジは高価で私は購入を諦めましたが聞こえにムラのあることに気がついた今、やはり今度購入する時には聞こえのムラにあわせられるハーフデジにしたいと思っています。これもお試しをきちんとさせていただいて。
A氏: 私も昨年12月に、W社製のデジタル補聴器を試聴しました音自体は結構自然な音だと感じましたが、周りの音や車の音が大きく聞こえたので、慣れないせいか少しつらいような気がしました。しかし、会話をすると、周りの騒音が抑えられ相手の声など、聞き取りやすくなり、何とも不思議な感じでした。最近の補聴器でもなるべく騒音を抑え、会話を中心とした調整のオーダーメイドも良いように思っていたのですがBさんのおっしゃるように、自然の全ての音が聞こえ、そして全ての音の中から自分の求めるべく音を導くことによって感情も豊かになるものかも知れませんね!
どちらにしても、デジタル補聴器に限らず補聴器を買い換えると、音慣れするまでどうしても約1ヶ月はかかります。
補聴器販売店の話によると、どこのメーカーもデジタルに移行していくようですが、価格が1台30万円、両耳でも50万円以上と高いのは辛いですよね。
D氏: そういえば皆さんは補聴器に寿命がある事を知っていましたか?私は知りませんでした。それは、正月、補聴器の片方が、突前聞こえなくなったので、交付して頂いた所へ、メーカーの方が、週に一度、来てくれるので、修理してもらいに行った時の事でした。目詰まりを起こしていたようですが、何とか聞こえるようにはなったのですが、機械音が入るのでおかしいと思ってたら、メーカーの方が言うには、何でも、5年以上も経つと、感度が落ちてくるので、お買い上げ時の性能を保つのは困難ということでした。そのため、5年以上経つと、補装具を申請する権利が生じるのだそうです。本当でしょうか?権利の話は本当でしょうけど、感度が落ちるなんて私は初耳でした。5〜6年で急に性能が悪くなるという事もないと思いますが、補聴器に寿命があるなら大変ですよ。何十万もするのに、冗談じゃありませんよ。一生使えるものとばかり思ってました。これについては、皆さんの方がよくご存知でしょう。ちなみに、私の補聴器歴は5年半位です。これ以外に20代の頃使った事ありますけど、よく聞こえないので質に流したっけ。今、思い出した。
C氏: 補聴器って、ホント高いですよね。私は、一日中補聴器をつけているし、汗っかきなので、2、3年で調子が悪くなることが多いです。
補聴器って、湿気に弱いですね。長持ちさせるためには、乾燥ケースに入れるのがいいみたい。
B氏: これは私の知ってる補聴器屋さんでも言っていました。本当みたいですよ。
C氏: 補聴器の店によっては、補聴器の湿気を除去するサービスをしてくれるところがあるので、定期的にやってもらうとよいかも。
今の国の制度では4年1回しか、それも決められた補聴器しか交付を受けられないことになっています。しかも1台だけ。
B氏: そうなんですか?私の住んでいるところで出している手引書にはそのような記載はないんですよ。窓口に行って初めて知らされるのかしら?
C氏:
そうですか……どちらにせよ私は両耳につけているので、2台交付を認めてほしいですね。また、FM補聴器は、成人聴覚障害者の場合は、交付の対象にならないからとても大きな出費になります。25万円かかったもんね。子どもさんの場合は教育上必要だからという理由で認められているそうですそれから4年に一回というのは、どこに明記してあるかわかりません。しかし、未確定ですが、厚生労働省では5年に1回にする、という方向で動いているようです。高齢者で老人性難聴の方がふえたからなのかな?
B氏: では、ますます厳しくなってくるってことね。
C氏: また、決められた補聴器というのは、確か身体障害者関連法令に、補聴器(補装具)支給限度額や補聴器の修理などの基準金額表が載っていたと思います。電池も修理券を交付してもらえば、支給されます。私の場合は、耳掛け式補聴器でボタン電池を使っていますが、年間36個を支給してもらっています。消耗品である耳栓やイヤモールドなんかも支給の対象になります。これは補聴器を交付されているからできるんです。電池単独は支給されません。ただし、これは自治体によってかなり対応がちがっているみたいです。所得によっては、自己負担額を払うよりも電池を自分で購入した方が安いというところがあります。
それに電池が支給されることはあまりアピールされていないしね。
B氏: 電池やイヤモールドが対象だってことは前に聞いた事があるけど、私の知っている難聴の会ではみんな自分で買ってるって言っていたなあ〜。何か面倒があるんだろうか?って思っていた。私で言えば、聴覚の手帳ももらったばかりなのでそういう制度は利用したことがないのね。
今行ってる先生は一応、補聴器の紹介状を書いてくれたけどあんまり好きでない店だったので行ってないのだ(一同笑い)
それから、私の町の手引書では「就労・就学等の条件があります」とあります。ですから、C氏さんは学生なので、交渉次第で可能だと思いますよ。たしか成人女性ですが大阪の方で仕事の時の会議の際にどうしても必要と言うことでFM補聴器を交渉して支給してもらいました。また今は学生ですが今後、就労するためにも必要なわけですから、十分可能だと思います。両耳は「幼少児使用者で」という記述がありますので厳しいかもしれません。でも、この記述もおかしくて「幼少児使用者で就労・就学条件あり」と書かれているんですよ。幼少児が就労なんかするかい?不思議だと思いません?(再び一同笑い)
司会: そうですね、それはおかしい。
C氏: 私が聞いた話では、子どもの時からFM補聴器を使っている方は、成人になっても認められるようです。
B氏: また、交付には医師の意見書が必要ですが、修理と再交付には成人の場合、意見書は不要です。交付の際に「両耳装用が必要」という意見書を書いてもらえたら、可能なのかな?
司会: うーん……どうなんでしょうね。
C氏: 大人の場合は難しいかも知れないけど、当事者や難聴者団体などが両耳装着の必要性をもっと訴えていかないといけませんね。
B氏: ご存知の通り、補聴器は聴覚障害を持つ人に補装具として補助金が支給されます。補聴器は等級に関係なく、1〜6級まで対象です。箱型でも耳掛けでもいいですが、挿入型は耳掛け型が使用できない人に限ります。また、両耳装用は先程も述べましたが「幼少児使用者で就労・就学条件有り。」となっています。この就学・就労条件というのが明記されてないのですが、大阪の聴覚障害の方の情報では学校や、仕事の会議などで使う人、つまり専業主婦や無職ではダメだということみたいです。
また、FM補聴器やデジタルなどの条件も明記されていませんが、基本的にはアナログで、高価なデジタルやFMはやはり仕事や学校が条件らしいです。ただし、自治体によって、かなりの差があって、そんな厳しいこと言われずに支給されたところもあるし、厳しく言われて、何度も交渉してやっと支給してもらった人もいるようです。でも、高齢者や、多くの聴覚障碍者・特に難聴者ではデジタルは高価で買えませんよね。業者はデジタルへ移行する考えみたいですが、行政の補助金を申請する方も、そこらへんは勉強して出来るだけいいものを(自分の聞こえにあったものを)両耳装用でできるように交渉しましょうね。と、言うことでお子さんの補聴器は就学児童で手帳認定さえされれば、両耳支給が可能です。
地域によっては、児童の聴覚障害認定が難しいところもあるそうですが、そこは理解のある先生を探しましょう。
司会: 何となく話がまとまったみたいですが、今回はこのへんでお開きに致しましょう。また、機会がありましたらよろしくお願いします。
一同: 有り難うございました。

※この、座談会はアイヤ会MLで流れた話題を再編集、及び再掲載したものです。また内容的に、現在の補装具状況とは異なるものもあります。


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