3.4月25日 講演会 講演録

  ※テーマ:よりよい生活のために 〜中途視覚障害者の方々へ〜
  ※講師:国立神戸視力障害センター指導課 生活支援専門職 成戸 宏幸 氏

   ★掲載にあたり、実際にお話しされた内容を一部変更してあります。ご了承ください。

     皆さん、こんにちは。はじめまして、よろしくお願いいたします。国立神戸視力障害センターの成戸(なると)と申します。ちょっと簡単に、たぶん全盲に近い方もおられるかと思いますので、自己紹介だけ申し上げます。身長が178センチくらいあります。体重は75キロくらいです。出身地は広島県です。すぐお隣です。経歴の方がたぶんご案内の中にあったと思いますが、高校まで広島の方におりまして、大学を卒業したあとは、最初別府の方で、厚生労働省が設置しております、体の不自由な方、車いすとか肢体不自由の方の施設におりました。その後、移動してきまして、現在神戸の視力障害センターの方におります。ちょっとこういう講演というのに慣れてないもので緊張しておりますけれども、どうぞよろしくお願いします。
     今日はこういう会にお招きいただいて、たいへんありがとうございます。テーマが、私にできるのかなと思うすごいテーマで、ちょっとドキドキしたんですけれども、奥村さんとも相談させていただいところ、ご存じない方もおられるからセンターの紹介を中心にしたものでかまいませんよとお聞きしましたので、安心して来ることができました。今日はこの時間をいただきましたので、特に後半の方で、生活訓練課程と申しまして、身の回りのさまざまな困っていることについて、いろんな訓練サービスを提供するコースがあるんですが、その辺を中心にして皆さんと一緒によりよい生活というのはいったい何なのかということを考えていきたいと思います。
     まず、最初にセンターの概要ですが、まず歴史的なところから簡単にご紹介していきたいと思います。今日、センターのご案内、パンフレット、それからセンターだより、機関誌、いわゆるガイドヘルプの方法を書いた資料、合計5種類の資料をお配りしているかと思います。それを参考にしながら聞いていただければと思います。
     まずセンターの歴史的なところなんですけれども、神戸の視力障害センターというのは昭和26年に開設されています。当時は、今で言うと、言葉としてはあまり使われなくなった言葉ですが、失明者の厚生施設ということで、名前も国立神戸光明寮といい、傷痍軍人の方を対象にした施設でした。これはどこもそうなんですが、当初戦争後間もない時期ですので、肢体不自由の施設もまた傷痍軍人の方を対象にしていたという歴史があります。その後、昭和27年から、あんま・マッサージ、当時はあんま師だけですね、あんま師の養成施設として、そういう職業指導といいますか、職業訓練を開始したというように聞いております。昭和39年から、名前が現在の視力障害センターになっております。その後、昭和53年になりまして、あんま・マッサージ・指圧師、はり師、灸師、ですから昭和53年まではあんま師だけの養成施設、昭和53年からははり師、灸師も含めた養成施設として認可されて、そういう職業訓練をずっとしているということです。
     平成元年に生活訓練課程が設置されました。ここで、理療教育っていう言葉を今言おうとしたんですけれども、あんま・マッサージ・指圧師、はり師、灸師を養成するコースのことを理療教育、俗に三療と言いまして、理療教育課程と言ってますけれども、それに対して生活訓練課程が平成元年から設置されました。さらにその後、平成7年に、医療分野の専門士という称号が与えられること決まって、その通知が来ております。
     現在、平成15年以降なんですけれども、理料教育課程も、あんま・マッサージ・指圧師、はり師、灸師ですが、中学校を卒業されて入られるコースの方を高等課程というふうに呼んでおります。それから、高等学校を卒業されたあと入っていただくコース、3年間なんですけれども、この3年間の課程を専門課程と呼んでおります。そして現在に至っているという歴史です。
     それから定員の方なんですけれども、高等課程、つまり中学校卒業の学歴がある方を対象としたあんま・マッサージ・指圧師、はり師、灸師のコースの方は、定員は現在15名で、全部で5年間ですから5つクラスがあります。ですので1学年15名で合計75名。それから専門課程、高等学校を卒業された方のコースは、3年間なんですけれども、1学年2クラスありますので合計で6クラス。で、15名×2クラス×3学年で90名ということになっています。それから、平成元年度に発足した生活訓練糧につきましては、半年間ということになっておりまして、年間で言いますと2期、前半期と後半期ですね、今のところだいたい5月から10月までが前半期、10月から翌年の3月までを後半期として、年2期行っています。定員は1期10名、年間を通しますと20名ということになります。現在までに、センターの理療教育課程の卒業生と言いますか、修了者はおよそ3200名あまり、3200名あまりのあんま・マッサージ師の方が卒業されているということになっています。
     次に、センターの概要ですけれども、パンフにもありますが、敷地がおよそ1万坪、パンフレットには32433平方メートルと書いてあります。およそ1万坪の敷地に、6584平方メートルの建物が建っています。建物の方は、パンフレットの配置図がご覧になれる方はご覧になっていただければと思うんですが、12棟の建物が廊下でつながった形で、増築を繰り返したような構造になっています。住所が神戸市西区曙町という場所にありまして、兵庫県の身体障害者リハビリテーションセンター、兵庫県福祉事業団の運営している綜合リハビリテーションセンターがあるんですが、その兵庫県のリハビリセンターに隣接した場所にあります。交通機関につきましてはJR明石駅から神姫バスに乗って7つめの停留所で降りていただきますと、ほぼセンターの目の前に着きます。交通機関からいくとほとんど明石駅が生活圏になりますので、国立神戸ではなくて国立明石視力障害センターと言うんではないかと言われるんですけれども、一応住所としては神戸市になっていますので、国立神戸視力障害センターというふうになっています。
     それから、現在いらっしゃる方の在籍状況を説明しますけれど、今年はまだ、生活訓練課程の方が5月からで始まっていませんので、データが出てる昨年ものを参考にご紹介しておきたいと思います。昨年の生活訓練課程の方が入られた時点で、在籍している方が94人です。先ほどの定員の数を聞いてらっしゃって計算された方はおわかりかと思うんですが、残念ながら定員をかなり大きく割っているという状況があります。今年につきましては、今のところ、見込みの数字なんですが、生活訓練課程が5月から始まる予定で、生活訓練課程の方は定員を超える応募者があるんですが、合計してもおそらく90名ぎりぎりというような状態になっています。
     在籍者の方の状況なんですけれども、19歳以下の方が、昨年の場合5名、全体のの5.3%、20代の方が20名で、21.3%、30代の方が19名で20.2%、40代の方が16名で17%、50代の方が最も多くて27名おられます、で、全体の28%、およそ3割は50代の方という状況です。それから70代を超える方もおられます。これは生活訓練課程の方なんですけれども、2名おられました。平均年齢はだいたい30代後半、例年30代後半から40代前半というところになっています。これは日本全体の視覚障害の方、手帳をお持ちの方の統計なんかを見ましてもかなり高齢化しているということがありますので、だいたいこのような数字になろうかと思います。
     それから、身体障害者手帳をお持ちの方の等級の方の統計なんですけれども、昨年いらっしゃった方の例で言いますと、1級の方が94名中25名で27%、2級の方が34人で35%。したがって1,2級の方、俗に世間で言われている重度と言われるような方になろうかと思うんですけれども、59名で62%ということになります。全体の3分の2の方は1級、2級の方です。それから出身地の状況なんですが、94人の内71人、およそ8割の方が兵庫県内の出身になっています。中四国地方につきましては昨年の場合7名おられました。94名中7名の方が中四国出身の方です。福祉施設の中では比較的交通の便がそれほど悪い方でもない場所にあるので、けっこう通ってくる方が多いです。今の94人の内だいたい20数名、今年の場合27名、昨年の場合25名くらい、およそ3割ぐらいは電車やバスを利用してセンターまで通ってきているというような状況になっています。
     それから、理療教育、あんま・マッサージ・指圧、はり、灸、その訓練で、実は何をやっているのかということなんですけれども、たぶん今日ご参加の方の中にも何人かはそういう免許をお持ちの方もいらっしゃるかと思うんですが、これは、あんま・マッサージ・指圧師、はり師、灸師に関わる、いわゆる免許ですね、施術をするための免許を取得するための職業訓練になります。あんま・マッサージ・指圧師に関わる学校養成施設、規定、規則に従って一定の科目といいますか、授業を行っています。具体的にはパンフレットの方に書いてあるような形で、たとえば解剖学とか衛生学とか結構難しい勉強をします。たぶん肩がこったりちょっと腰を痛めたというので、治療院の方に行かれた方もいらっしゃると思うのですが、そういう仕事をするためには、今日本の法律では免許が必要になってますので、その免許を取るための職業訓練ということになります。パンフの方では6ページの方に載っているのがそうなんでが、これは専門課程、高等学校を卒業した方の授業の一つの例です。東洋医学概論とか、それから実習、実技ですね、あんまの実技やマッサージの実技、はりの実技といったような内容の勉強をするコースということになります。3年ないし5年間というのは、これは全部法律で授業の単位数が決まっていますので、高校卒業以上の学歴の方でも最低3年間、中学校卒業の学歴の方は5年間かけてこの必要な単位を取って初めて、免許を持つ試験を受けることができるということになります。流れの方は3ページから4ページにかけて書いてあるんですけれども、3年ないし5年間の訓練を終わったあとに受験資格を得ることができますので、その後国家試験を受験していただいて、厚生労働大臣の方から指圧師の免許あるいははり士の免許ということで、免許の交付を受けて仕事をするということになります。
     それから卒業後の進路につきましては、パンフレットの方に書いてあるような形なんですけれども、割と多くの方、3割くらいの方は開業、それから同じく3割くらいの方が治療院へ就職というようなことで、手に職をつけられて就職をしていかれるということになっています。パンフレットの写真がご覧になれる方は見ていただければ、授業の風景であるとか、クラブ活動の風景などの写真も入っておりますので、ご参考にしていただければというふうに思います。
     それから、生活訓練課程の方を次にご紹介したいと思いますけれども、平成元年度から生活訓練課程が設置されまして、今年でちょうど16年目に入るということになっています。生活訓練課程につきましては、これもどういう内容かということなんですけれども、こちらの方は学校かどうかわかりませんが、たぶんリハビリテーションという言葉を聞くとある程度推測ができると言いますか、ある意味でリハビリテーションの中の一つかなということが言えるのではないかと思います。リハビリテーションと言いますと、たとえば病気とか事故とかで障害になられた方が社会に復帰していくための一連の課程と言いますか、狭くとらえますと病院などで訓練をするという意味もあると思うんですけれども、そういった流れの中の一つとして生活訓練課程があるというふうに考えていただいてもよろしいかと思います。
     難しい話は少し飛ばしまして、センターの方の生活訓練課程につきまして、どのようなことをやっているかということなんですけども、視覚障害の方のリハビリテーションということになりますので、これは一般的にどこの施設も同じだと思うんですが、急に目がご不自由になられた、たとえば事故とか病気で急に目が悪くなると、歩けなくなるとか知らない場所に行くと迷ってしまうとか、文字が読みにくくなるといったようなことが起こると思います。それらをさまざまな訓練とか、補助具を利用すこととか、あるいは何らかの工夫を一緒に考えながら、そういった不便さとか困難な状況について対処していくと言いますか、生活をよりスムーズにこなしていくためのいろんな生活技術のアドバイスをしたり、そういう工夫をする訓練のコースになっています。センターの生活訓練の案内につきましてもパンフレットをお配りしてるかと思うんですけれども、見える方はパンフレットの方を参考にしながらお聞きになっていただければと思います。センターの生活訓練の内容について、どんなことをやっているかということですけれども、まず歩行訓練。これはたぶん言葉くらいはほとんどの方がお聞きになったことがあると思います。自分の意志で自由に出かけていくと言いますか、出歩く、特に屋外を歩けるように、たぶん見えにくくなると怖くて夜は出にくくなるとか、知っていたはずの場所でもふとした拍子に目的地を見失ってしまって迷ったりとか、まして知らないところに行くと段差が怖いとかあると思います。それをたとえば杖を利用したり、あるいは先ほど大活字さんから紹介のあった懐中電灯、夜であれば懐中電灯を利用するとか、あるいは目の使い方、全く見えないわけではなくて少しは見えるというのであればその見える部分をうまく利用して安全に歩ける方法を一緒に考えるといったような訓練を行っています。杖を使う方については杖の使い方、持ち方とか、どういう場面ではどういうふう使えばより安全かといったようなことを歩行訓練という訓練科目でやっています。
     それから、コミュニケーションに関する訓練。見えにくくなってきますと、文字が読めないあるいは書きにくいということがあると思いますので、それに対する訓練サービスとして、まず一つは点字です。点字も、実際この中にもご利用になっている方がいると思うんですけれども、6つの点で点字を書き表す、あるいは指で触って読むといったような基本的な内容をやっています。6ヶ月間ですので、全ての人が点字の全ての読み書きをすらすらできるようになるかと言いますとなかなか時間のかかる場合もあるかと思いますが、基本的なことについてはほぼマスターできるかと思います。
     それから、パソコンです。これは最近非常にご希望の方が多いんですが、先ほどご紹介した60歳、70歳の方もですが、最近パソコン訓練を皆さんされています。パソコンを利用して読み書きする方法を覚えていくということですね。これもまず最初触ったことも見たこともない方から順番に手順を追いまして、まずパソコンのスイッチ類だとかどういう装置があってどこを触ればいいということから訓練をしまして、音声を利用する方、画面を加工することで見やすくするという方もおられますので、その方にあわせてどうすれば一番操作がしやすいかということを考えながらやっています。最終的にはパソコンをキーボードだけを利用して操作できる、あるいは場合によってはマウスを使う方もいらっしゃるかもしれませんが、何らかの形で自分の思うような操作ができるようになる。最終的には電子メール、あるいはインターネットの利用、具体的に言うとホームページを見る、そういったようなことができるように訓練をしています。これで、文字は見えにくいけどメールならばいろんな人と連絡が取れるとか、あるいは自分の見やすい状態で見られますので、返事を書いて送ることができる、印刷することができるといったようなことを身につけるということになると思います。
     それから、ハンドライティングという訓練があります。字を書くということについて、どうしても普段の生活の中で、書けない、書いても読みにくい見えにくいということから書かない生活になりがちだと思います。パソコンもいいですけれどもパソコンまではという方も中にはおられますし、結構高価なものですから、パソコンは買えないけれども普通に字は覚えているから書けるという方もおられますので、これは、手紙とかハガキなどに、専用の型をくりぬいた補助具、いわゆるケーペールというものがあるんですが、そういったものを利用して文字を書いていけるようにしたり、海外旅行でトラベルチェックなどは自分のサインが必要ですので、そういった名前と住所くらいある程度書けるということを、工夫しながら練習をするという内容になろうかと思います。
     次に、ロービジョン訓練があります。これは全く見えないわけではなくて何らかの視覚的機能が残っている方について、自分にはどこがどれだけ残っていてどんなふうに見えているのかということをまず一緒に考えていくということから始まるかと思うんですが、ご自分の残された視覚的な機能がわかれば、それをどうすればどんな場面で利用できるか、何に利用したいか、そのくらい自分で見えるならこういうことができるかなあという、ご自分の利用したい、生活に生かしたいことを一緒に考えて、そのための意識化と言いますか、見える部分を活用する、あるいは補助具を考えていくと言ったようなことになろうかと思います。たぶんここの皆さんもそうでしょうけども、わりとこの自分がどのくらい見えているのか見えないのか、見えないっていうか見えにくいっていうことはすごく意識するんですけれども、見えるっていうことはやはり意識しにくくなってくるということがあるかと思いますので、自分が利用できる視覚的な機能を確認して、それが何に使えるかということを一緒に考えていくという訓練になろうかと思います。
     それから、日常生活訓練というものがあるんですけれども、これはそれ以外のさまざまなことをやっております。たとえば、服とネクタイの色あわせであるとか、化粧のしかた、お金の区別のしかたなどです。今度またお札変わるみたいですけれども、色だけではお札の見分けがつかないですね。サイズが今5ミリくらいですか、お札の長さが少し違うので、それで区別する方が多いかと思うんですが、それをどういうふうに工夫すればより間違いなく区別ができるか、その方の見え方に応じて工夫のしかたを考え増す。また、買い物に行くときに、値札とか賞味期限とか原材料が見えにくい、そうなるとついつい買い物もおっくうになってしまうということもあるかと思いますが、どうすれば少しでも工夫できるか、楽にできるか、あるいは生活を豊かにできるか、買い物をどうすれば自分の思うようにできるかいうようなことについて一緒に考え増す。それから洗濯、掃除、その他あらゆる細々したことがあろうかと思いますが、そういた身の回りの不便さ、あるいは日々暮らしていく中での困っている部分をお聞きして、それについて、いろいろアドバイスなり補助具を利用する方法なり、あるいは何らかの工夫をしていくといったような内容になります。中には調理っていうことも入ってくると思います。調理をするのにも、やはり包丁が怖くて使えないということがあると思いますので、どういうふうにすれば安全に操作できるかということを訓練します。
     その他にスポーツ、教養、レクリエ−ションといったような内容も行っています。スポーツの方は主に視覚障害者向けのスポーツの紹介、あるいは将来家に帰られてもご家庭でできるような軽いストレッチングのようなものの紹介とか、そういったことを行っています。それから、教養レクリエーションというような言い方をしてますけれども、内容としては、福祉制度の活用方法とか、あるいは音楽を楽しんだりとか、あるいは生活の中でいわゆる楽しみと言いますか余暇活動ですね、たとえばどっか遊園地へ出かけていくとかだれかと一緒に遊びに行くというような場面もあるかと思いますので、そういった楽しみを見つけるという意味で、近隣のそういう施設に一緒に行ってレクリエーション活動ヲするというようなこともやっています。
    ちょっとしゃべり方が早口かもしれません、申し訳ありませんが、理療教育課程と生活訓練課程のそれぞれの訓練内容は今だいたい申しあげたような内容になります。全体に共通して、特に私自身関わっている仕事の部分のご紹介なんですけれども、理寮教育課程と生活訓練課程の両方を私たちの部署は担当していますので、両方ともかけ持ちというような状態になっています。ですが、可能な限り、生活訓練の場合は生活そのものがテーマになりますので、その豊かな生活を実現するために、皆さん方のそもそもの目標ですね、入ってこられた方の目標なり希望なりを尊重して、それに向けてどういうふうにすればよいかということを今一生懸命考えているところです。
     昨年度から生活訓練の方でアンケートを実施していまして、昨年14名の方が生活訓練を終了されたんですが、そのアンケートの結果を簡単にご紹介したいと思います。生活訓練の方を受けられた14名の内9名の方がほぼ期待通りの成果を得たと回答していただいております。訓練科目別に、先ほどご紹介した科目でいいますと、歩行とか点字、パソコンといったところは、だいたい7割から8割の方に非常に満足しているという結果をいただいております。たいへんにありがたいことだと思います。ところが、その他の部分ですね、たとえば社会見学、レクリーション、スポーツ、それから給食の内容、あるいはオリエンテーション、たとえば館内のどこに何があるかを覚えていただくためにオリエンテーションをやるのですが、それになってきますと満足度が低い。その辺は生活訓練を受けるにあたって、自分の目標と言いますか、どういうところで困っているということがはっきりする部分では非常に満足度が高いと言えるんじゃないかと思っています。今後このアンケートを生活訓練の方では実施して積み重ねていきますので、もう少し数が集まってきましたら、さらに内容を変えていくためにそのデータを参考にしていきたいと思っています。
     それから、次に、日本ライトハウスと盲学校の違いということの説明も簡単にして欲しいということでしたので、一般論でたいへん恐縮なのですが、そこら辺のことを簡単に紹介したいと思います。まずセンターの場合、利用条件から申し上げますけれども、利用条件としては、国内に居住している身体障害者手帳をお持ちの方、もし今まだ持っていないけれども申請中で入所時までには交付されるという方であればかまいませんので、手帳をお持ちになっているということが条件になります。年齢的には15歳以上の方ということになります。学歴の方はセンターの場合、あんま・マッサージ・指圧、はり、灸の方の高等課程でしたら中学校卒業以上の学歴が必要です。専門課程の場合は高等学校卒業以上、生活訓練課程につきましては学歴は一切不問ということになっております。
     この利用条件はどうか、他の所とどうかということなんですけれども、日本ライトハウス、ここはうちと同じようにいわゆる身体障害者福祉法に基づく厚生施設ですので、利用条件としては基本的には同じということが言えると思います。15歳以上で身体障害者手帳を持つということですね。日本ライトハウスの相談の窓口担当の方にお聞きしたのですけれども、日本ライトハウスの場合はそれ以外に面接を行うことが条件ということになっています。日本ライトハウスの担当の方と事前に相談をしていただくということになるそうです。総合面接というふうにいうそうですけれども、それを受けた上で入っていただくということになるそうです。
     盲学校さんの方は、これは岡山県立盲学校の資料を拝見したんですけれども、学校は文部科学省が管轄しておりますので、どちらかというと子供さんがもともと対象だったところになるんですね。ですから年齢条件としては15歳以上という縛りはありません。視力的な部分につきましても、資料の方を拝見しますとおおむね0.3未満、または視力以外の何らかの視覚機能が著しく低下している、たとえば拡大鏡の利用によっても普通の文字が読めなかったり、図形の視覚による認識が難しいといったような、そういう見ることが難しい方、普通の学校の普通の学校教育では勉強についていくのがちょっと難しい方、そういったような方が対象ということになると思います。
     ライトハウスや視力センターと学校で全く違うのは、当然学校ですので、教育基本法もしくは学校教育法に基づく、子供さんへの学校としての普通教育、たとえば、国語、算数、理科、社会を教えるということが中心です。ライトハウスと視力センターは生活訓練、大人の方が対象で、視覚障害になられたことによる困難さを解決したり、あるいはうちの場合でしたらプラスあんま、はり、灸のコースがあるといった違いになろうかと思います。
     それから、利用料金の方の関係なんですけれども、もし入られた場合、うちのセンターの場合につきましては、これは全国どこも基本的に共通していると思うんですけれども、身体障害者福祉施設ですので、利用料金についてはご本人や家族の方の収入に応じて、その一部を負担していただくということになっています。今の制度では今年度の場合、月額最高で32000円以内の範囲で、前年の収入に応じて段階的に無料から32000円まで利用料金が変わるということになります。もちろん収入のない方は無料で利用できます。これは日本ライトハウスさんも全く同じ、日本ライトハウスの場合も32000円以内、前年の収入に応じて一定の利用料金がかかる場合がある。収入のない方はもちろん無料と。これについては実際利用するにあったて利用するときの申告書の用紙がありますので、それに基づいて決まるというということになります。盲学校さんにつきましては、これも収入によるんですけれども、各都道府県や国の方からの補助制度があるそうです。就学奨励費という名前の補助制度があるそうで、これにつきましては収入に応じて全額補助、半額補助、補助なしというような3段階に査定されるというように聞いております。それから、授業料は無料、教科書も無料。センターもあんま、はり、灸の方に進んだ場合教科書は無料、これは同じです。利用料は収入に応じて違うということになります。
     それから、訓練の内容ですけれども、あんま・マッサージ・指圧、はり、灸に関しましてはセンターと盲学校は基本的には同じ法律、あんま・マッサージ・指圧師、はり師、灸師等に関する法律に基づいていますので、それに必要な授業、訓練を行う、盲学校の場合それを専攻科というコースで行っていると思います。ですから盲学校でも普通科に行くと職業訓練がありませんので、専攻科に進んだ場合ということになります。
     それ以外の部分の違いとしましては、生活訓練ですね。センターでもやってますし、日本ライトハウスでもやっています。ただし盲学校ではやっていない。盲学校には生活訓練というコースがありませんし、だいたい一般的に、盲学校で歩行とか点字とかパソコンとか、どういうふうにやっているかというと、クラブ活動の一環であったり、あるいは養護訓練と称して養護教育の先生が週1時間対応するというレベルです。内容ももともと先ほど言いましたように盲学校さんは学校教育ですので、生活訓練という部分がどちらかというと規定時間外にやらざるを得ないという状況があると学校の先生からも聞いています。寄宿舎のある学校さんであればあんまりそういう必要性もなかったりするのでしょうけど、通うという必要性がある場合は、放課後に学校から家までの歩行指導を担当の先生がしているということも聞いています。学校によって多少は違うと思いますけれどもそういう状況です。
     それに対して視力センターとかライトハウスは大人の方の施設で学校ではありませんので、集中的な訓練をやってます。日本ライトハウスの方は、どうなふうな体制かと言いますと、ジョイフルセンターというのと生活訓練センターというのと大きく2つに分かれていまして、ジョイフルセンターの方では、視覚障害だけではなくて知的障害とか全身性の障害であるとか、あるいはベーッチェット病の方とか、そういった視覚障害だけではない方にも、さまざま対応していこうというようなコースが設けられています。その中で、その方に応じていろんな必要なことを相談をして訓練サービスを提供していくということです。それからもう一つ、生活訓練センターというのがあって、こちらが私どもの方の視力センターとほぼ同じように視覚障害単一の方を対象にした、一般的な、歩行とか点字とかコミュニケーション、パソコンとか日常生活などの訓練をやっているという体制になっています。それから、職業訓練の方の状況はどう違うかというと、視力センターと盲学校はあんま・マッサージ・指圧、はり、灸に関してはほぼ一緒、同じ法律に基づいてあんま師、はり師、灸師の資格を得るという点で全く一緒なんですが、日本ライトハウスの職業訓練というのはあんま、はり、灸はありません。日本ライトハウスの方はあんま・マッサージ、はり、灸ではなくて、電話交換とか情報処理といったコースが設けられています。電話交換につきましては1年間のコース、情報処理のコースは1年間のコースと2年間のコースがあります。いずれの場合も日本ライトハウスのジョイフルセンターないしは生活訓練センターにいったん籍を置いて、そこから職業訓練に進んでいくことになるということです。そういった違いがあります。
     非常に駆け足で、たいへん恐縮ですが、ライトハウスと視力センターと盲学校さん、それぞれだいたいの違いと言いますか概要というのは以上のような感じになります。一番元になっている違いは何かというと、設置がライトハウスと視力センターは厚生労働省の管轄下にあるわけです。盲学校さんは文部科学省の管轄下にあると。で、実際の運営は盲学校さんの場合は教育委員会が一番運営の元になっているかと思いますので、そこら辺で多少内容が違ってきているんじゃないかと思います。

    (このあと、質疑へ)
    質問:専門士とは?
    回答:大学を卒業されたときに付与される学士などの称号と同じで卒業生に与えられる称号である。

    質問:あんま・マッサージ・指圧師だけのコースはないのか?
    回答;以前経過措置ということであったが、今はない。資格試験の合格率が鍼灸の方が6,7割で、あんま・マッサージ・指圧師の方が8割で、鍼灸の方が難しいので按摩の方だけ集中して勉強される方もおられる。

    質問:在宅の方の相談への対応は?
    回答:基本的に勤務時間内に往復できる範囲の方。明石近辺から神戸市内、姫路、相生までが多いが、ケースバイケースで可能であれば対応する。日本ライトハウスの場合は、奈良県、堺市、宝塚市などからの委託を受けて相談を受けるという事業をやっている。

    質問:糖尿病のような他の病気がある方の受け入れは?
    回答:生活訓練の方は最低限健康面の自己管理ができること。理療課程の方は一定の期間、3年ないし5年間、支障なく訓練ができる方となる。

    質問:生活訓練コースへの昨年度の入学者が15名というのは定員割れしているのか?
    回答:延長して訓練された方がおられる。

    質問:盲学校は網膜色素変性症のような進行性の病気の患者である場合、身体障害者手帳を持っていなくても入学できる場合があるが、センターはどうか?
    回答:身体障害者手帳のない方については入っていただくことができないが、相談をお受けすることは可能である。

    質問:パソコンは初歩段階だけか?また、将来的に日本ライトハウスのようなパソコンに関する職業訓練を行うコースを設ける予定は?
    回答:内容については入所者と相談をした上で決めていく。センターではあんま、はり、灸以外の職業訓練のコースを設ける予定は残念ながらない。ただし現職で就労されている方がその職を続けようとされる場合、アドバイス等行えることもある。

    質問:他の施設との違いは?
    回答:視覚障害者の方を対象にした厚生施設は北から、函館、塩原、所沢、神戸、福岡にある。建物、設備等多少の違いはあるが、訓練内容は変わらない。

    質問:生活訓練に関しては随時入所ができるか?
    回答:入所が遅れたり訓練を延長をしたりということはあるが、随時入所とまではいっていない。今後の課題である。

    質問:日常生活用具や便利グッズの紹介とか販売などは行っているか?
    回答:展示コーナーを設けている。直接販売はしていない。また、ある程度機器についての説明も行える。ただし、平日だけとなる。

    質問:寮は夏休みと冬休み以外、土日は帰宅しなくていいか?
    回答:はい。

    質問:生活訓練の半年間の利用料金は?
    回答:厚生労働省の管轄下にある施設は、前年の収入に応じて決まる。月額、最高32000円で、総額は訓練期間による。

    質問: 歩行訓練は半年間でどのくらいまで危険なく歩行ができるようになるか?
    回答:健常者並ということを目指している。ほとんどの方が半年間で安全に歩行できるようにはなる。

    質問:夏休みや冬休みはどのような仕事をされているか?
    回答:センターの紹介をしに行ったり、修了生のお宅を訪問したりしている。

    質問:修了時に自宅付近で歩行訓練をしていただくことができないか?
    回答:行ける範囲の方は修了段階で自宅付近での訓練をしている。