作品情報
あなたは今、誰と暮らしていますか。家族とですか。恋人、あるいは友達
とでしょうか。それとも一人ですか―。
今、ぜひ、あなたにお話したい物語があります。それは或る老人とその孫娘
のことなのです。
その老人は、若い頃、北の海で漁師として荒削りに生きてきた男でした。
今では妻を失い、財産もなく、体を壊して、孫娘の世話を受けています。
孫娘の母は数年前に他界し、この世には居りません。老人の名は忠男、
孫娘の名は春、といいます。
春は、増毛の町で小学校の給食係として健気に働いていましたが、廃校になり
職を失いました。
思案の末、東京に出て仕事を探そうと思い立ちましたが、身体不自由な忠男は
一人で生きて行けません。
とは言え、将来のある若い春をいつまでも束縛するわけにはいきません。
そこで忠男は、疎遠となっていた親類縁者たちに、今後の世話を頼もうと考えます。
寂れた海辺の家をあとに、忠男と春は旅に出ました。落ち着く棲家はあるのでしょうか。
兄夫婦、気丈な独り身の姉、弟夫婦などを巡り歩く老人と孫娘の二人旅。
それは忠男にとって、否応もなく過去の事実や感情と向き合わざるを得ず、
春もまた祖父の肉親葛藤をまざまざと見、そこから目を背けるわけには行きません。
 
この映画の原作・脚本・監督の小林政広をご紹介致します。
小林政広は、これまでにカンヌ国際映画祭への4度の出品や、
『愛の予感』で第60回ロカルノ国際映画祭金豹賞(グランプリ)を含む4賞を受賞するなど、
世界的に注目される才能の持ち主です。今回は、「家族のドラマ」に視点を据え、
全国一斉公開の大作として、比類なき日本映画の感動篇を完成させました。
その綿密繊細にして骨格ある演出に応えて、演技陣の充実も見逃せません。
脚本に惚れ込んだ名優・仲代達矢が、渾身の演技で元漁師・忠男を演じ切っています。
孫娘・春を演じていますのは、若手演技派女優として注目の新進・徳永えりです。
この二人を囲むキャスト陣容も、堅実にして豪華な名優・ベテランが揃って競演。
忠男の兄夫婦に大滝秀治と菅井きん、弟の内縁の妻に田中裕子、その隣人に小林薫、姉に淡島千景、
弟夫婦に柄本明と美保純、春の父に香川照之、その後妻に戸田菜穂という配役を組んでいます。
そして全篇を清冽繊細、しかも雄大にして優しさに満ちたテーマ曲で満たすのは、
故高田渡と共に数々の優れた音楽シーンを残す佐久間順平です。
どうか皆様、祖父と孫娘の旅を見つめてください。よろしければこの旅にご同行ください。
 
ストーリー
北海道から東北・宮城へ――
疎遠にしていた家族をめぐる旅のゆくえ。
ある日、突然――
ひとりの老人が家を捨てた。
孫娘春が、あとを追った。
旅の始まりは、まだ寒い北海道の四月、かつてニシン漁に沸き、今ではその面影すら留めない
北海道・増毛の寂れた海辺。そこのあばら家で老漁師・忠男(仲代達矢)と孫娘・春(徳永えり)は、
つましい生活を続けていた。しかし、時の流れとともに二人の暮らしは行き詰ることになる。
気仙沼に豪邸を構えながらも、老齢で忠男の世話どころではない兄・重男(大滝秀治)と
その妻・恵子(菅井きん)。他人の罪を背負って服役中の弟・行男の内縁の妻・愛子(田中裕子)。
その隣人の中年漁師・木下(小林薫)。鳴子で温泉旅館を女手一つで切り盛りするしっかり者の
姉・茂子(淡島千景)。仙台で不動 産業に行き詰った弟・道男(柄本明)とその妻・明子(美保純)。
――行く先々で二人を待ち受ける現実には、現代社会の諸問題の余波が及ぶ苦しいものがあった。
それぞれの家庭の事情と、北海の漁師として一途に生きてきた忠男への肉親たちの愛憎と葛藤。
そして、心と心の隔たりと通い合い―― 互いの勝手と情とのあいだで、思いがけない激しい感情が
交錯しぶつかり合うのだった。
そうした祖父と肉親たちの再会を目の当たりにした春は、これまで長く離別していた父親(香川照之)
に会いたい思いに駆られる。
そして忠男と共に、北海道・静内の後妻・伸子(戸田菜穂)と暮らす父の 牧場へ向かった――。
 
以上です。是非 見に来てね。

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