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●コケーン症候群

匿名希望


コケーン症候群(Cockayne's syndrome)は1936年(および1946年)にCockayneが“網膜萎縮と難聴を伴う小人症”として発表したのがはじまり。また、早老症のひとつとして知られ、常染色体劣性の遺伝形式をとるまれな疾患である。概要は小人症、進歩的な色素性網膜症、鳥状顔貌の小頭症、日光過敏症によって特徴付けられ、種々の症状を示す疾患である。ざっと拾っただけでも早老性外観、精神遅滞、不釣合いに大きい手足を持った長い四肢、小脳性運動失調(症)、頭蓋内石灰沈着、脊柱後弯症、骨粗鬆症、感覚神経性聴力損失などがあり、眼疾患においては、眼球陥入、視神経萎縮、細動脈、白内障、反応の乏しい散瞳などがみられ、角膜ジストロフィ、眼振、羞明(光恐怖症)などを伴うこともある。また、虫歯や永久歯の欠如、歯槽突起の萎縮などの記載もみられる。(虫歯の記載があるのは健常者よりなりやすいと解釈される)

タイプ別については、1982年にLowryが最初の数年または幼年期で明らかとなる古典的なCS症状を持つ一般的なタイプTと生後で異常を示す、より厳しい症状を持った一般的でないタイプUに臨床的に分類されると提案した。同じ年の1982年にLehmannが患者の臨床像に基づいて、3番目のタイプのコケーン症候群を提案したという報告がある。それらはタイプA(またはT)、B(U)、C(V)と区別されることがある。しかし、現在ではタイプCのコケーン症候群は色素性乾皮症相補群Bとして位置付けられ、コケーン症候群の現在のタイプ別は2種類である。タイプTは幼年期、タイプUは幼児期、先天的という表現が多いが、発症年齢については文献によって異なり、ファジーである。通常、誕生で正常であり、精神遅滞、小頭症、および成長障害は時間の経過とともにあきらかになる。また、タイプUのほうが予後不良で生存率はより低いとされる。また、タイプAが染色体5q12、タイプBが染色体10q11上の遺伝子の変異によって起こされることが知られている。

 正常な人はDNAに傷ができるとDNAを修復する作用が働くが、コケーン症候群の患者はUV(紫外線)照射に対して著しく過敏症でUV被爆後のDNA損傷の回復は起こらない。ただし、その他のDNA修復障害のひとつである色素性乾皮症などと異なり、コケーン症候群は皮膚がんと結びつかない。根本的な治療法はなく、対症療法である。

※網膜色素変性症と訳した文献が多いがCockayne症候群における正確なスペリングはpigmentary retinopathyで直訳は色素性網膜症である。

※Cockayne, Edward Alfred (1880-1956) 英国の小児科医


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