あぁるぴぃ広島 15号


■特別寄稿 讃岐うどんを巡る旅 ■

 愛媛のワン吉です。
1 讃岐うどんを巡る旅 〜坂出〜
 10日、中・四国リーダー研修会、ワン吉は集合時間の3時間前に到着、いつもの 様に一人町並み散策します。
 取りあえず坂出美術館に行こうとして、この町に暮らす高校の美術部の後輩の事を 思い出し電話します。美術館の事を聞きます。「大した物やってませんよ」「じゃ3 時間ほど付き合えよ」って事にしました。彼は日曜日で起きたところとの事、で、少 し時間が掛かります。 やはり一人で駅周辺の散策です。
 そして、取りあえず通り掛かりの人に公衆トイレを案内してもらいました。駅左手 に出ますと、ちょっと素敵な門柱のある公園が有りました。(自由にお入り下さい) と、大きく書かれてあります。書いてないと個人の邸宅の様です。よく整備されてい て、休憩室も用意されています。一回りして外へ。直ぐ隣にアールデコ大正ロマンの 建物が、「博物館」と大きな看板がありました。障害者割引が有るかなと思いつつ手 帳をバックから出そうとしたら、その看板の隣に(無料」の文字を見つけました。入 り口あたりでキョロキョロしてたものですから、中から職員の方が出てきて(どう ぞ、どうぞ」と、導き入れてくれました。
 見る前に隣の公園の事と、この建物についてお聞きしました。何とかと言う醤油大 尽の邸宅跡だそうです。この建物はそのお大尽から図書館として寄贈された物を、今 は改装して郷土博物館にしているとの事でした。玄関ホールに下がるアールデコのラ ンプは欲しかった。館内の展示品は測量機器が多く、造形的に面白く、興味をそそら れました。ケースに入っているので手にとって触って見れないのが残念です。一通り 見終わった頃、携帯に「近くに着きました。」と連絡が入ります。玄関の段差で2度 踏み外し、こけそうに成ったので、館長さんが外まで付いてきてくれました。
 後輩の高級外車がお迎えです。僕は純粋美術の道を歩みました。そして金には成り ません。先輩の轍(てつ)は踏むまいと後輩は商業美術の道に進み、金持ちです。 「何処か面白い店を案内しろ」と、先輩風を吹かせて骨董店に、後輩は先輩の喜びそ うな所を知っています。その店の息子さんも造形作家の道を歩んでいるとの事、ドイ ツの美大にも留学したとの事、何だか話が弾んでしまいました。その時、Mさんから 「駅に着きました。一緒にお昼しましょう」と、電話が入ります。「また明日帰りに 寄ります。」と店を後にしました。
 後輩は言います。「3杯ぐらいいけますか。」そうなんです。讃岐うどんは、店に よりいろいろ特徴があり、名店を三軒ぐらいを回って食べなきゃいけないのです。そ んなツァーが今は大流行、飛行機で来たり、観光バス、タクシーで沢山の人が回って います。


2 A級、B級、C級うどん

 地元に住まう後輩に、うどんの講釈を受けながら、うどん店を案内してもらいま す。まずA級うどんと有名な店に行きます。12時に間が有るのに、もう長蛇の列が 出来てます。気弱な愛媛のM嬢とワン吉は、「あれを待ってまで食べる気はしな い。」と腰が引けてしまいました。
 A級うどん店の定義、
 自家製手打ちうどんである。小売を本業せず製麺と卸を建前にしている。故に食堂 風の店構えは無く、工場である。工場で食べさせて頂くのだから、湯がく、トッピン グの類は自分でする。だからメニューはシンプルにひとつ、ふたつしか、ありませ ん。食べさせて頂いたのだから、片付けは自分でします。要するに、製麺所でうどん 玉を分けてもらい、丼をお借りして、葱などを少し供給して頂いて、工場の隅とか、 庭先で食べさせて頂きます。丼を元に返すのを忘れないように。釜揚げはお湯の入っ た丼に湯がいたうどんを入れます。つけ麺です。ぶっ掛け、湯がいた麺にだしをぶっ かけて食べます。釜玉、湯がいた麺に生卵を落とし、生醤油を掛けます。この辺り が、今人気のA級店の食べ方です。100円、120円、卵を入れて150円で済み ます。今、釜揚げで有名な店の前に居たのですが、逃げ出してB級店に向かいます。
 残念、休みです。A級店、B級店は日曜、祭日は休みます。工場ですからほとんど 休みます。  B級うどんはA級うどんと定義はほとんど変わりません。ただドンブリがタライに なったり、変化をつけてきます。食べるところも母屋を使ったり、縁側を使ったり、 庭にプレハブを建てたり色気を見せ始めます。その分シンプルさが無くなります。値 段も100円から200円と成ります。
 とうとう我々はC級うどんに向かうことに成りました。
 C級うどん店に成ると、店に看板が出ています。食堂の様にテーブルや椅子が用意 されています。セルフサービスの形式をとり、トレイにうどんをもらいトッピングを 追加して、ついでに巻きずしや稲荷など取らせて、金額も嵩む様になっています。手 作りうどんと銘打ち、デモンストレーションで捏ねてる処を見せたりしていますが、 裏で機械で捏ねています。僕達3人はザルうどんを食べました。C級成れどC級なり に頑張って美味しかったです。


3 讃岐うどんは手抜きうどんか?

 そんな風に食べさす讃岐うどんは手抜きうどんでしょうか。  お爺さんとお婆さんでやっているお店は手が回らないので、馴染みの客が、畑で葱 を抜いてきたり、ドンブリ洗いをしたりしてます。葱を客が刻む店では、最近若い女 性の客が増え、包丁を遣わすと、指を切ったりトラブルが有るのでハサミを置いてあ ります。ハサミでチョキチョキ葱を刻みます。
 さて、我々は坂出駅に集合です。目が見えない分、大声で話しているので、すぐ仲 間を見つけることが出来ます。全国大会依頼の懐かしい顔がそろっています。
 宿からお迎えのマイクロバスに乗り込み、研修会場へ到着すると早々に研修に入り ました。三重の河原支部長さんから、支部立ち上げの講演がありました。このことに 関しましては、いろいろと質問、疑問、難問が山とあります。支部のない愛媛県人と しては片身の狭い様な、頭の痛いところです。その辺りは後日書かせて頂きます。
 その後、JRPSに関わったきっかけなど個々に話しました。活躍されている方は、す ばらしい出会いが有った様です。出会い方、出会う人、出会う行事、其の印象が、そ の後を決定づけるのでしょうか。
 バリアの張り巡らされた宿で、入浴タイムです。シュシュポッポッでお風呂に行き ます。スロープをくだり、食堂を抜け、2段会談を登り、エレベーターが混雑のた め、暗い階段を登り、左に曲がって、右に曲がって、右手の暖簾をくぐります。脱 線、衝突を繰り返しながら、何とか少しは見える方の助けも借りて、無事温泉に浸り ます。
 宴会です。小さな鍋に火が入り、煮込みうどんが煮えています。讃岐は何処でもう どんが付いてます。少し甘めの煮込みうどんでした。


4 讃岐の夜は眠らない

 宴会の後は、居酒屋「ヒロシマ」で2次会です。とても元気なマスターが居ます。 夜が更けても衰える処を知りません。ビールの追加に次ぐ追加です。大繁盛です。隣 のKさんに「あんたは栓が抜けたタルだね」といいますと、「あっちの方がもっと凄 いぞ」と言っています。栓じゃなく底の無い人も居るようです。
 飲めない僕らは、誰かから気の抜けたジョーク100連発を受けて、腰が砕けて下 りました。今夜も讃岐で居酒屋ヒロシマは眠りません。
 寝なくっても日が昇れば朝は朝、麻風呂に入って、生ビールをグビィです。
 11日はうどん作り交流会です。昨夜の雨は上がっています。
 マイクロで金毘羅の会場まで送ってもらいます。瀬戸大橋を望む丘を下り、土器川 を遡ります。左手に飯盛山、別名を讃岐富士のこんもりとした山を回るようにして、 バスは進みます。讃岐平野は小さい山が、ぼこぼこと頭を出した、やさしい風景で す。やがて右手に、象が伏せているような象頭山(ぞうずさん)金毘羅大社のある山が 見えてきました。それは象の耳の後ろ辺りに当たります。どう見ても象の頭には見え ないと、言う声も聞こえます。僕には鼻を伸ばし静かに休む象が見えるのですが。
 金毘羅の門前町をバスが進みます。お祭りとの事で、登り旗が幾本も風にはため き、屋台が並び、呼び込みの声も聞こえ、昔ながらの家並みも続き、森の石松一行も 歩いていそうな雰囲気です。いやいや我ら一行も、「酒飲みねぇーうどう食い ねぇー」と、うどん学校に殴りこみです。


5 うどん学校入学

 さあ!ここから待望のうどん作り体験教室です。なんだか皆で緊張して講義を待ち ます。我々の前に、タライとその中にビニール袋に入ったうどんの粉(中力粉)と塩水 の入った器が入っています。その前に麺棒と包丁がセットされています。
 うどん粉をタライに移し、器の水を8分目ぐらいを混ぜて下さい。といわれます。 8分目?器に入っている水が見えません、見えない水の8分目は分かりません。取り あえず粉に水をたらしながら、器に指を入れたりしながら、だれかれと無く「これく らいかな」と、聞いて見ます。先生が「私がやるようにやって下さい」と言います。 「見えません」と答えます。ただ指示に従い進めます。まあ、少し残して混ぜはじめ ます。少しの水なので中々混ざりません。「タライの粉を残さない様に」と言われま す。白いタライに白い粉見えません、タライの隅にいっぱい粉が残っているようで す。机が低いので、もう腰が痛いです。手探りでたらいの粉を掻き集めます。そして 残りの水を加えて、手のひらでもむようにします。そして一纏めにして、手のひらで 押しては伸ばし、まとめては押して伸ばします。腰を入れなくてはいけません。腰が 疲れています。なんだかダマダマがいっぱい在りそうです。それでも不思議と粘りが 出てきました。上手にできている人は生白いうどん粉が粘りのある黄色味を帯びてき ているようです。うどんは腰が大事です。みんな頑張りますが、滑らかな肌触りには 成りません。一心不乱に黙々と頑張った人はもち肌に出来ています。ワン吉のように ワンワン言っていると、中にフツフツの塊がありそうな肌合い、にきび面(づら)で す。
 それでも何とかなりそうなので、きちっと一塊(ひとかたまり)にして、ビニール 袋に入れて、1時間半寝かします。寝かせてる間に、美味しいうどんに育ちます。僕 らはその間に金毘羅散策です。


6 うどん学校で自作うどんの食事会

 金毘羅散策は思いのままに、僕は谷 文兆の障壁画が公開されていると言うので目 指しましたが、山門の階段で400段目ぐらいで諦めてしまいました。多分もう直ぐ の処に在った気がします。登るのは何とか成りますが、下りは階段を踏み外しそうで した。同行した方は僕と反対に暗いところが見やすいとの事で、何とか助け合って降 りられました。
 うどん学校に皆が戻り、伸ばして、切って、食べます。うどんの生地を縦にした り、横にしたりして、万遍無く伸ばします。麺棒に巻きつかすようにして伸ばしま す。「同じ厚さに成る様に」と言われます。広げてみると、山あり谷あり湖ありで す。手で撫でては、厚さを確かめます。なんだか北海道の様な形になりました。隣を 見るとハンカチのように四角く伸ばせて降ります。「三つ折にして下さい」と言われ ます。粉を撒いて折りたたみます。僕はそこで気が付きました。なるべく四角くして ないとうどんの長さが変わります。もう手遅れです。
 うどんの刻みが始まりました。包丁で3mmに切っていかねば成りません。白い机 の上に白いうどんの生地、どこが机でどこがうどんか見えません。手で探り、人差し 指を3mm下げて包丁を入れます。押すように切りなさいといわれます。ついギコギ コ引いて仕舞います。まったく見えないのに上手に3mm幅に切れている人が居ま す。立派なお母さんです。お父さんにも居ます。もうきし麺で諦めた人も居ます。気 をつけすぎて素麺の人も居ます。
 それをほぐしながら粉を払います。気にして幅を切りなおそうとしている人も居ま す。僕は何とか3mm幅ぐらいに切れているようですが、長さがめちゃくちゃです。 もとは北海道の地図ですから、半島の処は2センチほどしか有りません。だんだん長 くなって、普通のうどんに成って、直ぐ短くなっています。


7 美味しいうどんご馳走様

 それぞれ自分のうどんを持って場所を異動です。そこにはお好み焼きの台の様な テーブルがあり、鉄板のところがなべに成っています。もうなべには湯が沸いていま す。一つのテーブルに3人づつです。テーブルには水差の水と、炊き込みご飯と、麺 汁と薬味がそれぞれ置かれてあります。一生懸命作ったので喉が渇いています。水差 しの水をガブガブの見ます。「えー、鍋にうどんを入れて下さい、そして煮立ってき たら水差しの水を足して下さい、それを3度繰り返してください」と、説明が有りま した。水差しの水、飲んでしまいました。
 鍋にそれぞれのうどんを自分の前に入れます。そそくさと三度煮たさせます。白い うどんが段々透明になり、箸で摘み上げると、きらきら輝いています。試しに食べて みました。美味しいのです。だまだまも無く、ツルッとして完全にうどんに成ってい ます。まだ芯があるけど、歯ごたえが有って美味しいです。「美味しいよ」と言いま すと、僕のテーブルは早々に食べ始めました。「硬いけど、美味しいね。」とSさん も、満足げです。隣のテーブルではやっと3度目の水を差しています。僕らは食い意 地の張ったグループです。中から粉がパラパラ落ちてきたり、ベチャと変な歯触りが 有ったら嫌だなと、思っていましたが、そんなことありません。小麦粉が寝かせてい る間につるつるな完全にうどんに成っているのです。不思議です。誰が発明したので しょう。Sお母さんのは、本物のうどんの様に長いので、鍋から、汁の器に取るのを 苦労しています。「もっともっと持ち上げて」と、声を掛けて上げます。ワン吉君の は短いので取り易そうです。「こりゃ、採り易くっていいや」と、自慢げです。
 美味しいうどんご馳走さま、食べきれないほど有りました。
 それから3階の畳の間で交流会です。新しく、初めて参加の4名の方も居て、歓声 が上がりました。
 うどん学校から終了証書もと麺棒を頂きました。これでうどん出張出前販売が出来 そうです。
 では その日まで、おわり


●愛媛のワン吉君からのメッセージ

 最後までお読み頂き、ありがとうございました。交流会の楽しさが少しでも皆様に 伝わり、今後の会に参加してみようと思われる方が増えると大変嬉しく思います。
・来年の2月26日 紙漉き体験と座談会、  その後、休暇村ー瀬戸内東予で交流会ー温泉です。 ・27日、ミニ講演会を開催致します。
 愛媛連絡会で初めての行事です。果たして参加者があるのかさえ心配です。
 皆様の御指導と御協力のほど宜しくお願い申し上げます。




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